天下台山(相生)

2020年9月14日


かなり涼しくなってきたので、手軽に登れそうな低山のなかから、相生の天下台山に登ってみることにしよう。標高わずか321mだというのに、壮大な名前を持つこの山は以前からとても気になっていたところだ。



JR相生駅からスタート。新幹線駅とは思えない静かな駅前だ。アルファベット表記すれば全て母音だったり、アイウエオ順では全国の市町村のトップだったり、妙なことで取り上げられることが多いところだ。



相生駅から天下台山の登山口まで市街地をテクテクと歩いていく。間もなく登山口という長池という溜め池のなかに妙な石碑がある。異体字で彫られているが鱗塚と書かれているようで、天保だか享保だかの年号が見える。周囲に何の説明板も無く気になって仕方ない。



相生駅から2~3㎞歩いて、ようやく天下台山への登山口がある岩屋谷公園にやってきた。山に向かって平坦な道が続くが、こんな道が頂上に続いているはずはない。



道は徐々に山道っぽくなってきたけれど、さほどの険しさはない。それなのに体はだるく、汗がどんどん噴き出してくる。



道端にホウキとチリトリが置かれている。近隣の方々が登山路の清掃をしてくださっているのだろう。



さらに進むと手作りの藤棚やベンチもある。地域の方々が大切にこの山を慈しんできたことがよく判る。



山頂に向かう道は丸太階段となり、一気に高度をあげていく。



頂上まで850mの標識がある。しかし山頂は標識の向こう側にある。谷を取り巻くように登っていかなければならない。



山頂の近くになると、地面の様相は急に変化して岩がゴツゴツした道になる。事前に調べたところによると死火山(今では使われない分類だという)なんだそうだ。大昔に生成された火山岩が山頂付近を覆っているようだ。



登山口から1時間ほどで頂上にやってきた。大きな火山岩が頂上を覆っている。



四方が開けた頂上からの眺望は抜群だ。眼下には相生湾が広がる。湾の向こうに見える煙突は、相生火力のものだ。赤穂坂越からのハイキングで登った宝珠山や茶臼山もよく見渡せる。



「山名板は近日作成します」と書かれている。名前負けしない威風堂々とした山名版を作ってもらいたいものだ。



山頂からの絶景を堪能し、涼風のお陰で汗も引いたところで、ノンビリと山を下りて行く。来た道とは異なり、西の相生湾方面を目指す。



途中、水戸大神本宮に立ち寄る。トタンで覆われた少々侘しい本堂で、背後の大岩がご神体のようだ。天下台山は龍脈(気の流れ)の源流になるんだそうだ。



さらに進むと行者堂がある。中には岩の洞穴があり、仏様が祀られている。昭和30年代まで、ここに修験行者が住み着いていたらしい。



山の麓まで下りてくると、「天空のパワースポット」の大きな看板がある。本堂は粗末だけど、看板は立派だ。それにしても天空のパワースポットとは山の名前にも負けない大仰なキャッチフレーズだ。



相生湾に面した相生町。相生という町にやってきた。名前からして相生市の元々の中心だったところだろうか。漁村であるとともに宿場町だったところらしい。昭和の香りがプンプンとする集落だ。



相生の集落を流れる川の堤防にはズラリと土嚢が積まれている。海との間を遮る回転式の防潮ゲートもあるけれど、高潮などの水害に悩む土地なのだろうか。



相生湾の対岸にはIHI(元の石川島播磨重工業)の事業所が並んでいる。ここには20002年までIHIへの通勤者のための箱船を並べた浮桟橋があったそうだ。橋の名前は皆勤橋。高度成長時代らしいネーミングだ。



海岸には相生が誇るペーロン祭の風景を象ったオブジェがある。30年近く前に一度見物に訪れたことがあるが、とても活気のあるお祭りだったという記憶がある。



海岸に沿って歩いていくと、相生出身の河本敏夫元通産大臣の銅像がある。中曽根康弘と総理総裁の座を争った大物だ。



相生の名所として多くの人が名をあげるペーロン城。道の駅であると同時に海の駅にもなっていて、海産物などの店が並んでいるけれど、メインの設備はスーパー銭湯だ。



JR赤穂線の西相生駅から帰路につく。単線の線路が赤穂方面に向けて延びている。



本日の歩行距離は約11㎞。もともも山道はそのうちの4㎞くらいでしかない。