2020年9月5日
台風接近で大気が不安定だというが、いろいろと気になっているスポットが多い神戸市東灘区をブラリと散歩する。阪神石屋川駅から北に向けてスタートだ。駅の南側は酒蔵めぐりなどでよく歩くのだが、北側に歩いた記憶がない。
石屋川沿いに続く緑地帯に「徳川道起点」を示す説明板がある。幕末に神戸在留外国人との接触を極力避けるため幕府が建造した迂回路だ。このあたりで西国街道から分岐して摩耶山の向こうの杣谷峠まで登り明石大蔵谷に下りるというウンザリするような険路だ。
東灘区のランドマーク、御影公会堂。重厚さ優雅さを兼ね備えた阪神間モダニズムの代表的建築だ。空襲や震災など大きな被害を何度も受けながらも大切に保全されてきた。最近も耐震補強工事を施されたばかりだが、気のせいか少し白っぽくなったような気がする。
改修後、初めて館内に入る。東灘区出身の嘉納治五郎の記念コーナーが新たに地下に設置されていた。治五郎翁も東京オリンピック開催延期にきっと気を揉んでおられることだろう。
石屋川公園に旧御影町のマンホールが残されている。昨今のマンホールブームが始まる前からあったように思える。御影町が神戸市の一部になったのが昭和25年だから、それより以前、ひょっとしたら戦前の制作かもしれない。貴重な郷土遺産だと思う。
石屋川に沿って緑地や歩道がよく整備されている。蒸し暑さを別にすれば、とても気持ちよく歩ける。
現在では東海道線は石屋川を鉄橋で跨いでいるが、かつては住吉川や芦屋川と同様に天井川である石屋川の下をトンネルで通り抜けていたという。写真の正面が石屋川、右の高架がJRの高架だが、高架下の崖にトンネル跡の碑が立っている。
東海道線のすぐ北にある網敷天満宮。鳥居には大綱が巻き付けられ、綱には災いを除く八雷神を象徴する8本の矢が刺さっている。ここを潜り抜けると1年間無病息災に暮らせると言われているそうだ。
さらに北へ進むと、石屋川給水拠点というものがある。災害時に断水した場合でも、ここまで来れば給水ができるという施設だそうだ。おそらく阪神大震災を経て、特別頑丈な給水施設を市内に何か所が設置したもののようだ。
石屋川の川幅は狭いけれど、その川岸には頑強な石の護岸壁が高く積み上げられている。大雨ともなれば六甲山からの急流がこれくらいの高さで押し寄せることが想定されているのだろう。鉄砲水の恐ろしさを感じさせる護岸だ。
石屋川を離れて阪急御影駅方面へと歩いていくと、加計学園の認定こども園に出くわす。英語も取り入れたユニークな教育プログラムを採用しているとようだ。いろいろと世間を騒がせている加計学園だけれど、ここは高級住宅街のなかで随分と落ち着いたところだ。
阪急御影駅前に御影城址の石碑がある。六甲山の山裾から山陽道に睨みを利かせていたのだろう。石碑には、有名な地域の歴史研究家の本から抜粋したと思われる文が記載されているのだけれど、残念なことに文語調でいまいち要領を得ない…。
阪急御影駅の北にある深田池。駅から数分のところだというのに、とても静かで、立派な松の木が並んでいる。
深田池の近くにある地元自治会の掲示板に「ぼんおどり中止」の貼紙がある。小学校の低学年の子供の手によるものだろう。とても拙い文字と絵だけれど、いかにも残念という思いが伝わってくる。
深田池より北側は住吉山手と呼ばれる超高級住宅街。汗をかきながら歩いていても、どうも居心地が悪い…。道を封鎖するようなフェンスが多く、勝手が判らない者には近寄り難い。
御影石の本場とはいえ、邸宅の周囲の石垣の立派さにも目を見張ってしまう。
灘目の水車にやってきた。住吉川流域には、精米や油絞りのための水車小屋がかつては88も並んでいたそうだ。今ではここに保存されている大小二連の水車だけになってしまった。それぞれ山田太郎車・次郎車と名付けられている。
灘目の水車から少し南へ下ると、文禄三年の銘が入った石仏が並んでいる。豊臣秀吉独裁政権のピーク期にあたる。この道は有馬に通じる道でもあるので、有馬好きの秀吉と関係があるかもしれない。
香雪美術館。もとは朝日新聞の創業者の邸宅で、そのコレクションを展示しているとは知っているけれど入館したことはない。美術品よりも驚くべきは敷地の広さだ。周囲には立派な石垣が延々と続いていて、おそらくは五万坪は下らないように思える。
香雪美術館の隣にある弓弦羽神社。阪神間に多い神功皇后伝説に由来する神社だ。
この神社が最近えらく注目されているのは、名前が似ているということでフィギュアスケートの羽生結弦選手のファンが大挙押し寄せているからだ。奉納された絵馬の多くは、羽生結弦選手への応援メッセージなどがビッシリと書き込まれている。
国道2号線に面して雨ノ神公園というものがある。以前から変わった地名が気になっているのだけれど、それっぽい神社は近くには見当たらない。おそらくは雨乞いに関係しているのではないかと想像する。
JR住吉駅の近くまで来たとき、急に空が暗くなり、雷鳴が轟き、大粒の雨が降りつけてきた。慌てて駅ビルに駆け込んで、惨事は逃れることができたが、これって雨ノ神公園に立ち寄ったせいだろうか…。
もう少し東灘区の気になるスポットを巡るつもりだったけれど、ゲリラ豪雨のために中断を余儀なくされる。歩行距離は5㎞強でしかないが、住吉駅から帰路につく。