2021年1月3日
令和3年の歩き初め。年末年始で弛んだ体と気持ちをリセットすべく、東灘区の六甲山麓を軽く歩いてみよう。住宅街にも近いこのあたりは、多くの登山道が輻輳する場所なので、体調や積雪の具合を見ながら臨機応変に歩く道を決めていこう。のんびりハイキングだ。
まずは阪急岡本から、標高180mにある保久良神社へと登っていく。崖の上には永年瀬戸内を行く船の安全航行のための灯台役を担ってきた「灘の一つ火」と呼ばれる灯篭が立つ。その歴史は古く、古事記にまで登場するという。
保久良神社の境内にある標識には、六甲、有馬と並んで金鳥山の文字が見える。メジャーな山のように見えるのだけれど、金鳥山の山頂を未だに確認できていない。今日の山歩きの第一目標は金鳥山の山頂探索なのだ。
金鳥山までは深い階段の道が続く。随分とハイカーの数が多い。子供連れのグループも少なくない難易度は超低い登山道のはずが、段差の高い石段の連続に早々に息切れしてしまう。この数日の不摂生のためか体も重く、超スローペースで進んでいく。
金鳥山の頂上近くの広場にはベンチが多数置かれているが、僅かとはいえ降雪の名残りが見られる。念のため軽アイゼンもリュックに入れてきたけれど、疲れもあって、今日はあまり無理はできそうにない。
地図によれば、広場から少し北に進んだあたりに山頂があるようなのだけれど、保久良神社にはあれほど大きな文字で案内されていた金鳥山の山頂への案内標識は見当たらない。それらしい高地はあるけれど、藪が深く先に進む気になれない。
アチコチとウロウロしたものの、山頂碑は見つからず、半ば諦めて、軽く下っていると思われる分岐道を念のため進んでいくと、唐突に標高338mの山頂碑が木に括り付けられているのを発見する。腑に落ちない山頂だけれど、本日の最大の目的は達成したことになる。
金鳥山からさらに北に進むと、分岐に差し掛かる。人が多そうな風吹岩方面への道を避けて、七兵衛山方面へと向かう道へと向かう。
七兵衛山方面へと向かう道は、細いながらも良く整備されていて、お気に入りの道のひとつだ。六甲山中では有り得ないと思われるほどにアップダウンが無いのだ。森林浴コースとも呼ばれているように、静かな森のなかを快適に歩いていける。
小さな沢に架かる橋が現れた。通常は材木にならない曲がった木を組み合わせたものだ。七兵衛山から八幡谷にかけては、専門業者によらない手作り感満載の施設が数多く見られる。「とある方」が、長年ボランティアで山道の整備をしていただいていると聞く。有難いことだ。
残雪がありそうな七兵衛山には立ち寄らず、山を迂回するように、水平道をそのまま進んでいく。
途中、軽い崩落があったりもするが、危険個所というほどのものではない。
土砂崩れの痕も見られるが、これも歩行には何の支障もない。
ところが七兵衛山からの下山道に合流したところで振り返ると、ここまで歩いてきた道の入口に通行止標識が立っていた。「通行止め」の「止め」の字を誰かが削り取ってはいるけれど、古い通行止看板が残っているようだ。管理が行き届いた六甲山系では珍しいことだ。
八幡谷方面に向かって下山していく。道の脇に散見される、一見廃木置き場にも見えるものは、手作りのベンチだ。これらも「とある方」が10年、20年かけて、整備されたものに違いない。
道端にある石も、表面が平らになり、高さも揃っているところを見ると、誰かがベンチとしてここに運んできたものに違いない。この道にはちょっと多すぎやしないか、と思われるほどの手作りベンチが据え付けられている。
もちろん、急な坂には手摺り、谷に面した道には路肩表示、といった具合に、この道を歩くハイカーの安全性と利便性を高めるための施設が多数作られている。あり合わせの木材で、決して格好良いものではないかもしれないが、実に有難く、頭が下がる思いだ。
山を下っていくと、木材をオブジェのように高く積み上げたところで、ひとり丸太をリュックに括り付けて作業をされている男性と出会う。きっと「とある方」に違いない。「ご苦労様です」とお声掛けしたけれど、もっといい言葉で労いと感謝の言葉を伝えたかった。
八幡谷の深い渓谷を横目で見ながら、岡本に向けて下山していく。九十九折になっている道なので、坂も苦にならず、とても歩きやすい。
下山口の近くにある道祖神(かなぁ?)。一体は下山口方向、一体は谷の方、と異なる方向を向いている。今日は赤と青のお揃いの前垂れをしているが、時には帽子を被ったり、エプロンのようなものをしていたり、どなたかが時折着替えをしてくださっているようだ。
下山後、岡本八幡神社に立ち寄る。手水鉢は蓋で覆われ、その代わりに、アルコール消毒液が設置されている。アルコール消毒液が参拝前のお清めに使われるような日が来るなんて思いもしなかった。コロナ禍の早期終息が本当に待ち遠しい。
本日の歩行軌跡。歩行距離は6㎞、累積標高は425m、と随分と軽めの山歩きだ。
標高グラフ。金鳥山登頂後、2㎞以上もほとんど水平な道を歩いていたことがよく判る。かなり楽な道だったはずなんだけれど、結構しっかりと疲れてしまった…。