三国岳(多可町)

 2021年5月30日


多可町の三国岳に登ってみよう。播磨・丹波・但馬の三国の境界付近に聳える標高855mの山だ。「かみ高地」と名付けられた道の駅がスタートポイント。地名の加美と、この地の名産品の和紙とを掛けた命名のようだ。



スタート後、しばらくは杉林のなかの林道を進んでいく。まずは体慣らしの平坦な道から始まるのは有難い。絶好の晴天とはいえ、気温は高め。4時間ほどのトレッキングではあるけれど、念のため2リットル近い水分を携行する。



林道から登山道へと入り、いよいよ山登りが始まる。要所には頂上までのルートを示す標札が立っているので安心だ。えっ、8合目だとぉ? あまり他では見かけないことだけれど、どうやらこの山ではカウントダウン方式の合目の設定をしているようだ。



樹林のなかを直登するような登山道に息が上がってくるのだけれど、ヘッポコハイカーにとってもギリギリ息継ぎのため立ち止まる必要がない程度、絶妙の勾配だ。さほどの急坂もなければ緩坂になることもない。同じような勾配の道が続く。



歩きやすく広い登山道が続くけれど、倒木や放置された伐採木が道に数多く転がっていることだけが気になる。ちょっとした渡渉などもあるけれど危険個所は無い。



眺望のない単調な登攀が続くので、あまり面白くなかった、との評価が多い山だけれど、道が明確で安心して登れるところは何をおいても有難い。個人的には決して嫌いなタイプの山ではない。



立ち止まることも座り込むこともないとはいえ、登り坂続きでペースはあがらない。合目のカウントダウンはなかなか進まない。かなり登ってきたと思うけれど、まだ5合目(山頂まであと半分?)だ。



ゲゲッ、狭い登山路の真ん中にマムシがいる。茶色い柄、頭の形…。シマヘビと違って石を投げても逃げない。小ぶりとはいえ退治する勇気もない。回り道もない。距離を保ちながら長い睨み合いが続いたけれど、幸い10分ほどでマムシは去ってくれた。どっと疲れた…。



少しずつ歩きやすい尾根道になってきたようだけれど、逆にペースダウン。マムシに出会ってから足元ばかりが気になり、どうしても慎重な足取りになってしまう。



ようやく稜線に出てきたようで、初めて眺望が開ける。もっとも見えるのは山ばかりで、町も川も見えないので、どちらを向いているのかが容易には判らない。



眺望が開けたのは、ごく一瞬。山の肩まで登ってきたようだけれど、再び眺望のない樹林帯を進むことになる。



三国峠。YAMAPのコースタイムではここまで1時間45分、ここから山頂までが30分。既に8割近くは登ってきているはずなのに、まだ4合目だという…。



頂上に近づくと、尾根道は徐々に平坦になってきた。「播磨のおどり場」の標識がある。なんだか曰くありげな名前だけれど、何の説明もない。頭上では、鳥(おそらくモズ)が高い声で鳴いている。



4合目以降、3合目、2合目と間隔はどんどん狭くなってきた。なんだかいい加減なものだ。てっきり頂上が1合目かと思っていたら、頂上の手前に1合目が現れた。頂上は0合目なのかぁ?



1合目の標識から僅か2分ほどで唐突に山頂碑が現れた。1時間50分という登攀時間はマズマズだ。昨日の五台山で失った自信を少し取り戻せた気がする。山頂は樹木も伐採され、小さな広場のようになっているけれど、蟻が多く、日射しを遮る陰もなく、大した眺望も無い。



日当たりの良すぎる広場に置かれた丸太に腰をかけての弁当休憩の後、下山を開始。目の前をタヌキが駆けている。登りで息継ぎで立ち止まることが無い程度の勾配だけに、下りでもストック無しでも安心して下りていくことができる。



ビクビクしながらマムシと出会った道を無事通過し、5合目付近で登ってきた道ではなく、山寄という集落へ下りて行く道を進むことにする。



登ってきた道と比べると、道は細く、ちょっと心もとないトラバースの道が続くが、危険は感じられない。



道の上には木の枝が多く、たびたびマムシ?とビクついてしまう。マムシにさえ出会わなければ気持ちよく歩いていたに違いない。



30分ほども山道を下りていくと、車も入れるような平坦な林道になる。渓流の瀬音を楽しみながら、ゆっくりと山寄の集落へと下りて行く。晴天の日曜日だというのに、登山口から下山口までの間、誰にも出会うことがなかった。



最後は山寄からスタート地点の道の駅までの国道歩き。車よりもバイクの数の方が多いように感じる。いくつものグループがツーリングを楽しんでいるようだ。



道の駅の真ん前にある青玉神社。背中や腰の痛みにご利益があるようだ。もとは三国岳山頂近くの播磨踊り場に祠があったらしい。本殿の前には樹齢1000年と言われる杉の巨木が7本も立っている。



距離8.8km、累積標高645m。所要は4時間弱。今の体力や技術でも安心して登れるレベルの山だったように思う。



標高軌跡を見ると、登りは登り一辺倒、下りは下り一辺倒だったことが判る。登ったり下ったりするよりも、こんな山の方が体力へのダメージは少ないように思う。




独鈷の滝&五台山(丹波市)~ 早々に撤退…

 2021年5月29日


丹波市の五台山(654m)に向かう。独鈷の滝から登り始めて、五台山、小野寺山、鷹取山、そして美和峠を縦走するという周回ルートだ。4時間程度で歩き切る予定だけれど、登山口に辿り着いたのは既に13時前。山に入るにはギリギリの時刻だ。



涼し気な渓流沿いに整備された遊歩道で山に入っていく。瀬音がとても涼し気だ。



しばらく進むと、独鈷の滝が現れる。弘法大師が独鈷(金属製の仏具の一種)をここに投げ入れ大蛇を退治したという伝説が残る。落差18mと言われる黒い岩肌を真っすぐに落ちる滝を観るためだけにここを訪れる人も多いようだ。



観瀑はほどほどにして、五台山に向けて延々と続く階段で滝の上部へと登っていく。階段の突き当りには不動尊の古いお堂が立っている。



不動尊を過ぎると、山歩きの序盤としては、かなり荒れた道を進む。歩きやすい道と聞いていたのだけれど…。



岩だらけの急斜面を登る道が現れた。これは美和峠に通じる道のようだ。この道を下りて戻ってくるのか、と思うとちょっと不安になってくる。



美和峠への道と分岐して五台山に向かう道を進んでいくと、登山道は工事中とのことで、「臨時登山道」へと導かれる。



臨時登山道の標識には、斜め45度くらいの矢印が付いているのだけれど、これが決して大袈裟ではないほどの急坂が現れた。これを攀じ登っていくのかぁ?



話が違うぞと心の中で叫びながら、ゴロゴロと岩が転がっている谷をとにかく登っていくしかない。浮石が多く、慎重に足の置き場を選んでいかねばならない。登るのはともかく下りたくない道だ。



急峻な坂を何とか登り終えると、美和峠への道に合流した。こんなことなら、最初の分岐点の坂を登ってきた方がよほど楽だったはずだ。何だか訳が判らない方向に誘導されているような気がしてきた。



美和峠への道とは別に五台山へと続くような案内板に導かれて進んでいく。とにかく美和峠経由ではなくて五台山に直接向かいたいのだ。



ところが、「この先工事中です」とあるではないか。五台山に直接行く道は閉ざされているのだろうか。



美和峠経由で五台山を単純往復する遠回りルートでは日暮れまでに戻ってこれないかもしれない。五台山に直接向かうルートに拘ってこの先工事中の看板を無視して進んでいくと、追い打ちをかけるように「この先通行止」のサインが現れた。



それでも急な登り坂を登って「午の首」という不気味な名が付いた峠までやってきた。他の方々の登山日記をいくつか事前勉強してきたつもりだけれど、聞き覚えの無い地名だ。



現在地を確かめると完全に登山ルートから外れている。上に伸びる赤線が五台山へ直接向かう道、右に伸びているのが美和峠への道だというのに、その真ん中を進んでいる。YAMAPのルートから外れて難路を突き進むほどの技量も体力もないことは本人が一番判っている。



とても手に負えない山だと自分に言い聞かせ、撤退を決意する。登山口から少しの間でも工事中や臨時登山道などの標識に翻弄され、進むべき道に自信が持てないうえに時間の余裕もない。午の首まで登ってきた急坂を慎重に下って登山口へと戻っていく。



登山口付近にある「五台山まで60分」と書かれた標識を恨めしい思いで振り返りながら、帰路につく。勇気ある撤退だと思いたい。結局のところ、どこをどう歩けば五台山に辿り着いたのか、臨時登山道とはどこなのか、判らないことだらけで下山する。



帰宅して、あらためて調べると、2年ほど前の台風で登山道が崩落していて、未だ復旧工事中のようだ。登山道が復旧するまで五台山はお預けだ。


妙見山(多可町)

 2021年5月25日


多可町の妙見山に出掛ける。北極星を神格化した妙見信仰に関係しそうな山だけれど、付近には関連しそうな神社が見当たらない。妙見山の南には横穴式石室が残る円形古墳が10基以上も並んでいる。飛鳥時代から妙見山が神格化されていたように思えてならない。



東山古墳群の目の前にある那珂ふれあい館からスタートし、鹿柵を越えて10分ほど登ったところが東山登山口。さらにしばらく進むと1合目の標札がある。手元の高度計で標高は220mだ。



標札には「あまんじゃこ」らしきイラストがある。この地方に伝わる悪戯好きの力持ちだ。おそらく「あまんじゃこ」は天邪鬼のことなんだろう。



決して急坂ではないけれど、ひたすら登り道が続く。息を切らして3合目に到着する。どうやら奇数合目に標識が設置さえているようだが単調な登りが続く道だけに随分と励みになる。標高は315m。おそらく標高約50mが1合に相当しそうだ。



ちょっと寄り道をして標高365mの城山のピークを獲得することを忘れてしまった。今更戻る気にもならず、再び登り続けて5合目到着。まだ半分かぁ…。思わず座り込んで10分以上も休憩してしまう。



登山道はとても良く整備されていて道幅も広い。枝や草も刈り取っているようで、歩いていても木の枝が腕や体に当たることもない。が、勾配は緩むどころか、ますます急になってきたように感じる。合目までやってきた。ここだけ古い標識が残っている。



7合目。まだ頂上まで150mもあるのかぁ…。暑くなってきたので念のため水を2リットルも抱えてきたのが堪える。意外にも体はさほどの水分を要求することなく、持ってきた水のほとんどはそのまま残っている。



「あまんじゃこの忘れ石」の標札がある。あまんじゃこが、妙見山と笠形山の間に橋を架けようとした際の土台なんだそうだが、周囲を見渡してもそれっぽい石が見当たらない。同じような伝説がある南河内の岩橋山には久米の岩橋と呼ばれる奇岩が残っていたんだけど。



あまんじゃこの忘れ石の標札からの急登を登りきると、ようやく眺望が開けてきた。東側に広がる多可の街が一望できる。



9合目。山稜部になってきたのか、多少は勾配が緩くなってきたように思うけど、足取りはますます重くなってくる。足があがらなくなってきた。



山頂までもうひと息というところで、ゴツゴツした岩が増えてきた。なかなか簡単には登頂させてもらえない。



やれやれ、歩き始めて2時間弱掛かって、やっとのことで頂上に辿り着いた。露出した岩の上に山頂碑が立っている。この山は元は火山だったそうだから、これらの岩は噴火した溶岩が固まったものなんだろう。



頂上からは笠形山も良く見える。あまんじゃこの橋づくりの話は、双方の山に橋を架けるための土台は作ったので、あとは丸太を架けるだけと思ったところ、そんなに長い丸太なんて無いことに気付くという馬鹿げたオチで終わる。



他に誰も登ってこないし、心地よい風が吹くので、遅い昼食を摂りながら珍しく30分以上寛いでしまった。山頂には多可町が、消毒液や絆創膏などを入れた救急ボックスを設置してくれている。道の整備、標札、救急ボックスと、ハイカー歓迎の気持ちが感じられて嬉しい。



時間もあることなので、予定通り帰路はかなり大回りになるけれど、牧野コースで下山する。



決して悪い道ではないのだけれど、うず高く積もった落ち葉のせいで、路面が確認しずらいうえに、とても滑りやすい。坂もかなり急なところがあり、油断できない道が続く。



路面には石もゴロゴロしているので、とても歩きにくい。落ち葉に隠れた石で度々躓きそうになる。トレッキングポールで足元を確かめながら、ゆっくりと進んでいく。登っているのと同じくらい時間を掛けて下りているように感じる。



岩だけでなく斜面の土などにも苔が多い。それもとても分厚く柔らかい苔だ。とても暗くてジメジメした雰囲気の道が続く。



牧野コースにも、あまんじゃこのイラスト入りの標識が設置されている。ズルズルと滑りやすい斜面に苦労しながらも、あまんじゃこのイラストを見ると、なんだかホッとする。



5合目まで下りてきた。落ち葉は相変わらず深く積もっていて苔むした道だけれど、勾配がやや緩くなってきて、ようやく落ち着いて歩けるようになってきた。



さらに下ると杉林のなかを進む快適道になる。杉の枯葉や枯枝が積もっているけれど、樫などの落ち葉に比べれば、滑ることもない。むしろ落ち葉が良いクッションになって歩きやすい。



杉林に続いては、松と椿とツツジが入り乱れるように繁殖している林を下っていく。木が低いせいもあって周囲が随分と明るくなってきた。林の隙間から、エメラルド色の牧野池が見えてきた。



牧野大池。近くで見てもやはりエメラルド色の水を湛えた貯水池で、牧野コースの登山口があるところだ。傍にはキャンプ場もあるのだけれど、最近閉鎖されてしまったようだ。とてもいいところに思えるのだけれど…。



牧野大池から東山登山口まで、林道を歩いて戻る。あまりアップダウンのない歩きやすい道を呑気に歩いていると、タヌキがじっとこちらを見ているではないか。タヌキの糞らしきものはよく見かけるけれど、タヌキと会うのは久しぶりだ。もう少し近づきたかったなぁ…。



本日の歩行経路。左下から時計回りで歩いて距離7.2㎞、累積標高706m。所要時間は予定を1時間近くも上回る4時間50分…。休憩が長かったこともあるけれど、それより登りも下りもかなり苦労させられた。



この妙見山は、以前登った能勢の妙見山と西脇市の妙見山とを結ぶ直線上にある。同じ直線上に他に2つの妙見山があるという。兵庫の妙見山直列と呼ばれるものだけれど、とてもミステリアスなことだ。残る2つの妙見山にも登ってみたい気がする。