2021年5月25日
多可町の妙見山に出掛ける。北極星を神格化した妙見信仰に関係しそうな山だけれど、付近には関連しそうな神社が見当たらない。妙見山の南には横穴式石室が残る円形古墳が10基以上も並んでいる。飛鳥時代から妙見山が神格化されていたように思えてならない。
東山古墳群の目の前にある那珂ふれあい館からスタートし、鹿柵を越えて10分ほど登ったところが東山登山口。さらにしばらく進むと1合目の標札がある。手元の高度計で標高は220mだ。
標札には「あまんじゃこ」らしきイラストがある。この地方に伝わる悪戯好きの力持ちだ。おそらく「あまんじゃこ」は天邪鬼のことなんだろう。
決して急坂ではないけれど、ひたすら登り道が続く。息を切らして3合目に到着する。どうやら奇数合目に標識が設置さえているようだが単調な登りが続く道だけに随分と励みになる。標高は315m。おそらく標高約50mが1合に相当しそうだ。
ちょっと寄り道をして標高365mの城山のピークを獲得することを忘れてしまった。今更戻る気にもならず、再び登り続けて5合目到着。まだ半分かぁ…。思わず座り込んで10分以上も休憩してしまう。
登山道はとても良く整備されていて道幅も広い。枝や草も刈り取っているようで、歩いていても木の枝が腕や体に当たることもない。が、勾配は緩むどころか、ますます急になってきたように感じる。合目までやってきた。ここだけ古い標識が残っている。
7合目。まだ頂上まで150mもあるのかぁ…。暑くなってきたので念のため水を2リットルも抱えてきたのが堪える。意外にも体はさほどの水分を要求することなく、持ってきた水のほとんどはそのまま残っている。
「あまんじゃこの忘れ石」の標札がある。あまんじゃこが、妙見山と笠形山の間に橋を架けようとした際の土台なんだそうだが、周囲を見渡してもそれっぽい石が見当たらない。同じような伝説がある南河内の岩橋山には久米の岩橋と呼ばれる奇岩が残っていたんだけど。
あまんじゃこの忘れ石の標札からの急登を登りきると、ようやく眺望が開けてきた。東側に広がる多可の街が一望できる。
9合目。山稜部になってきたのか、多少は勾配が緩くなってきたように思うけど、足取りはますます重くなってくる。足があがらなくなってきた。
山頂までもうひと息というところで、ゴツゴツした岩が増えてきた。なかなか簡単には登頂させてもらえない。
やれやれ、歩き始めて2時間弱掛かって、やっとのことで頂上に辿り着いた。露出した岩の上に山頂碑が立っている。この山は元は火山だったそうだから、これらの岩は噴火した溶岩が固まったものなんだろう。
頂上からは笠形山も良く見える。あまんじゃこの橋づくりの話は、双方の山に橋を架けるための土台は作ったので、あとは丸太を架けるだけと思ったところ、そんなに長い丸太なんて無いことに気付くという馬鹿げたオチで終わる。
他に誰も登ってこないし、心地よい風が吹くので、遅い昼食を摂りながら珍しく30分以上寛いでしまった。山頂には多可町が、消毒液や絆創膏などを入れた救急ボックスを設置してくれている。道の整備、標札、救急ボックスと、ハイカー歓迎の気持ちが感じられて嬉しい。
時間もあることなので、予定通り帰路はかなり大回りになるけれど、牧野コースで下山する。
決して悪い道ではないのだけれど、うず高く積もった落ち葉のせいで、路面が確認しずらいうえに、とても滑りやすい。坂もかなり急なところがあり、油断できない道が続く。
路面には石もゴロゴロしているので、とても歩きにくい。落ち葉に隠れた石で度々躓きそうになる。トレッキングポールで足元を確かめながら、ゆっくりと進んでいく。登っているのと同じくらい時間を掛けて下りているように感じる。
岩だけでなく斜面の土などにも苔が多い。それもとても分厚く柔らかい苔だ。とても暗くてジメジメした雰囲気の道が続く。
牧野コースにも、あまんじゃこのイラスト入りの標識が設置されている。ズルズルと滑りやすい斜面に苦労しながらも、あまんじゃこのイラストを見ると、なんだかホッとする。
5合目まで下りてきた。落ち葉は相変わらず深く積もっていて苔むした道だけれど、勾配がやや緩くなってきて、ようやく落ち着いて歩けるようになってきた。
さらに下ると杉林のなかを進む快適道になる。杉の枯葉や枯枝が積もっているけれど、樫などの落ち葉に比べれば、滑ることもない。むしろ落ち葉が良いクッションになって歩きやすい。
杉林に続いては、松と椿とツツジが入り乱れるように繁殖している林を下っていく。木が低いせいもあって周囲が随分と明るくなってきた。林の隙間から、エメラルド色の牧野池が見えてきた。
牧野大池。近くで見てもやはりエメラルド色の水を湛えた貯水池で、牧野コースの登山口があるところだ。傍にはキャンプ場もあるのだけれど、最近閉鎖されてしまったようだ。とてもいいところに思えるのだけれど…。
牧野大池から東山登山口まで、林道を歩いて戻る。あまりアップダウンのない歩きやすい道を呑気に歩いていると、タヌキがじっとこちらを見ているではないか。タヌキの糞らしきものはよく見かけるけれど、タヌキと会うのは久しぶりだ。もう少し近づきたかったなぁ…。
本日の歩行経路。左下から時計回りで歩いて距離7.2㎞、累積標高706m。所要時間は予定を1時間近くも上回る4時間50分…。休憩が長かったこともあるけれど、それより登りも下りもかなり苦労させられた。
この妙見山は、以前登った能勢の妙見山と西脇市の妙見山とを結ぶ直線上にある。同じ直線上に他に2つの妙見山があるという。兵庫の妙見山直列と呼ばれるものだけれど、とてもミステリアスなことだ。残る2つの妙見山にも登ってみたい気がする。