2021年5月29日
丹波市の五台山(654m)に向かう。独鈷の滝から登り始めて、五台山、小野寺山、鷹取山、そして美和峠を縦走するという周回ルートだ。4時間程度で歩き切る予定だけれど、登山口に辿り着いたのは既に13時前。山に入るにはギリギリの時刻だ。
涼し気な渓流沿いに整備された遊歩道で山に入っていく。瀬音がとても涼し気だ。
しばらく進むと、独鈷の滝が現れる。弘法大師が独鈷(金属製の仏具の一種)をここに投げ入れ大蛇を退治したという伝説が残る。落差18mと言われる黒い岩肌を真っすぐに落ちる滝を観るためだけにここを訪れる人も多いようだ。
観瀑はほどほどにして、五台山に向けて延々と続く階段で滝の上部へと登っていく。階段の突き当りには不動尊の古いお堂が立っている。
不動尊を過ぎると、山歩きの序盤としては、かなり荒れた道を進む。歩きやすい道と聞いていたのだけれど…。
岩だらけの急斜面を登る道が現れた。これは美和峠に通じる道のようだ。この道を下りて戻ってくるのか、と思うとちょっと不安になってくる。
美和峠への道と分岐して五台山に向かう道を進んでいくと、登山道は工事中とのことで、「臨時登山道」へと導かれる。
臨時登山道の標識には、斜め45度くらいの矢印が付いているのだけれど、これが決して大袈裟ではないほどの急坂が現れた。これを攀じ登っていくのかぁ?
話が違うぞと心の中で叫びながら、ゴロゴロと岩が転がっている谷をとにかく登っていくしかない。浮石が多く、慎重に足の置き場を選んでいかねばならない。登るのはともかく下りたくない道だ。
急峻な坂を何とか登り終えると、美和峠への道に合流した。こんなことなら、最初の分岐点の坂を登ってきた方がよほど楽だったはずだ。何だか訳が判らない方向に誘導されているような気がしてきた。
美和峠への道とは別に五台山へと続くような案内板に導かれて進んでいく。とにかく美和峠経由ではなくて五台山に直接向かいたいのだ。
美和峠経由で五台山を単純往復する遠回りルートでは日暮れまでに戻ってこれないかもしれない。五台山に直接向かうルートに拘ってこの先工事中の看板を無視して進んでいくと、追い打ちをかけるように「この先通行止」のサインが現れた。
それでも急な登り坂を登って「午の首」という不気味な名が付いた峠までやってきた。他の方々の登山日記をいくつか事前勉強してきたつもりだけれど、聞き覚えの無い地名だ。
現在地を確かめると完全に登山ルートから外れている。上に伸びる赤線が五台山へ直接向かう道、右に伸びているのが美和峠への道だというのに、その真ん中を進んでいる。YAMAPのルートから外れて難路を突き進むほどの技量も体力もないことは本人が一番判っている。
とても手に負えない山だと自分に言い聞かせ、撤退を決意する。登山口から少しの間でも工事中や臨時登山道などの標識に翻弄され、進むべき道に自信が持てないうえに時間の余裕もない。午の首まで登ってきた急坂を慎重に下って登山口へと戻っていく。
登山口付近にある「五台山まで60分」と書かれた標識を恨めしい思いで振り返りながら、帰路につく。勇気ある撤退だと思いたい。結局のところ、どこをどう歩けば五台山に辿り着いたのか、臨時登山道とはどこなのか、判らないことだらけで下山する。