荒地山(芦屋市)【六甲山系】

 2020年12月10日


ロッククライミングの名所として知られる芦屋市の荒地山に向かう。標高は低いが手強い岩場だらけの山は苦手中の苦手なんだけれど、YAMAPでの登頂100山目に相応しい難関に敢えて挑戦しよう。



阪急芦屋川駅からすっかり秋色の気配に包まれた芦屋川に沿って高座滝方面へと歩いていく。正面の山がまず向かう城山(鷹尾山)だ。六甲銀座とも言われる高座滝からの中央稜とは谷ひとつを隔てた東隣の山々を目指す。



山芦屋の住宅街で歩きなれた高座滝に向かう道と別れて城山に登っていく。まずは歩きやすいハイキング道が続く。崖に沿った道には、木の枝を束ねたガードレールが施されている。



城山山頂。わずか標高260mだが瀬戸内海がよく見渡せる。室町時代後期、管領家細川氏が分裂した家督争いで、阿波・淡路に睨みを効かしていたこの城を巡って芦屋河原の戦いという大きな戦があったのだけれど、何の説明板も見当たらないし遺構も残っていないようだ。



城山を過ぎると、それまでの道とは打って変わって、険しく岩でゴツゴツしたものになってくる。



馬の背状の尾根道をいくつもの岩を飛び越えたり攀じ登ったりを繰り返しながら登っていくが、これらは所詮、岩梯子の前哨でしかない。



岩だらけの道を歩くこと数十分、ついに垂直にそそり立つ岩梯子が現れた。登り損ねたら大怪我必至なんだけれど、不思議なことに怖くてここで引き返したという話を聞いたことがない。気持ちを奮い立たせて、両手両足に精一杯の力を込めて、岩梯子を登っていく。



岩梯子をクリアしても、岩との格闘が終わるわけではない。積み重なる大きな岩をひとつひとつクリアしながら、上へ上へと登っていく。



出たぁ。七郎兵衛嵒と名付けられた岩のトンネルだ。岩を攀じ登りながら体を捻って穴の上に出なければならない。不安な気持ちを振り払い、穴の中に体を思いっきり捻じ込んでいく。岩の隙間には潜り抜ける際に落下させたと思われるペットボトルなどが散乱している。



七郎兵衛嵒をクリアした後も、息つく暇も与えられず、行く手を塞ぐ巨岩との闘いは続く。幸い花崗岩の風化はさほど進んでおらず、グリップがよく効いて滑ることはない。



危なっかしい梯子も見られる。触ってみたところ容易に壊れることはなさそうだけれど、やはり心配だ。岩登りにはウンザリしてはいるけれど、梯子を使わず岩を攀じ登っていく。




六甲山には中央稜の風吹岩を中心に猫が多く住み着いているが、ここでも5匹の猫に出会う。断崖絶壁の岩場でもさすがに猫たちは平気なようで、のんびりと日向ぼっこをしている。



岩の壁を滑るように下りてくる人とすれ違う。荒地山へはここを登るのかと聞いたところ、「大丈夫、登れますよ」との返事。が、どう考えても登れそうに思えない…。幸い巻き道を発見できたけれど、六甲山には山の猛者が多く、後ろを付いていくと酷い目に遭いがちだ。



足元がしっかりしているせいか、事前に想定していたよりかなり無難に岩稜地帯を登りきったつもりだったけれど、荒地山の山頂(549m)に到着したところで、燃え尽きてしまったような気分になってきた。後はのんびりと中央稜を通って下山することにしよう。



荒地山から中央稜の魚屋道へと抜ける道も、結構厄介なところもあるけれど、岩梯子や七郎兵衛嵒と格闘した後のクールダウンのようなものだ。



なかみ山を経て魚屋道に出てきた。最近は但馬や播磨の山ばかり登っていたので、あらためて六甲主要登山道の広さに驚く。さすがに六甲銀座と呼ばれるだけのことはあって、道はしっかりと踏み固められ、道を草が覆っているようなところさえない。



少し寄り道して久しぶりに横池にやってきた。岩だらけの道だったので、山中にありながら平原の中にあるような池の景色に癒される。



魚屋道の木々の隙間に荒地山が見える。山肌は岩だらけだ。キャッスルウォークとかテーブルロックとか、荒地山にはもっと恐ろしいところがあるようだが、これ以上の難所にいはとても行く気にはならない。



風吹岩。ここでも7匹の猫に出会う。阪神大震災の際に山に逃げた飼い猫が繁殖したと聞くが本当だろうか。野良猫にしては毛並みは悪くない。ここではイノシシにもよく遭うのだけれど、幸か不幸か今日はお出ましにならない。



阪急岡本駅方面に下山するつもりだったけれど、気が変わってロックガーデンを通って芦屋川駅へと向かう。何度も登った道だけれどこの道で下山したことがないことに気づいたのだ。岩ゴロゴロの厄介な道だけれど、荒地山に比べればどうってことはなかろう。



と思って下山していくが、谷底へと梯子で降りるような難所が現れる。登りと下りでは道の見え方が異なるのは判っているけれど、こんな道あったかなぁ…。かなりビビりながら谷に下りたが、どうやらメインルートから少し外れて歩いていたようだ。



想像していたよりもロックガーデンの下りは、かなり骨が折れる。既に結構疲れていることもあるけれど、やはり登りの際には感じない怖さが下りの時には感じられる。



楽々登れる岩なのに、下りるときはへっぴり腰になってしまう。たぶん登りも下りもさほど所要時間は変わらないはずだ。岩梯子や七郎兵衛嵒を通って下山することなど、到底考えられない。1回下るより、10回登る方がマシだ。



意外なほどに疲れた状態で高座の滝に下りてきた。やれやれ疲れた。でも、超苦手な岩場をそれなりに克服でき、少しだけど自信が沸いてきた。



本日の歩行軌跡。距離は7.8㎞、累積標高は610m。残念ながら地図や数字では岩場の厳しさは判らない…。