向山連山(丹波市)

 2020年12月4日


丹波市の向山(むかいやま)連山の縦走に出掛ける。日本一低い中央分水嶺で有名な生郷(いくさと)地区の石生(いそう)の集落を包み込むような馬蹄形の連山を巡る道は、なんと10もの山頂を経由する。ピークハンターではなくとも、ちょっと気持ちが高揚してくる。



ところが、現地に到着すると小雨が降り続いている。予報では明け方に少し雨が降った後は一日中晴れるとのことだったのに、雨は止む気配を見せず、これから向かう山々もガスで覆われている。



そのうち止むだろう、止まなければ下山しよう、と考えてスタートするが、登山口からいきなり標高で200m分くらいほぼ直登する急坂が待ち構えている。こんな天気の日にホントに登るのか?と山の神様に試されているようだ。



連山十峰のうちの第一座、二の山まで急な坂道を登ってきた。標高は298m。向山連山を時計回りに9時の地点から登り始めて二の山が10時地点だ。この後三の山(11時地点)、四の山(12時地点)と続くのだけれど、どうしたことか「一の山」は無いようだ。



小雨とは言えない降りになってきた。これから向かう山々もますますガスで霞んでしまっている。止めるなら今のうちだよなぁとも思うし、折角ここまで来たのだから登らないとと考えるのは危険だとも判っているのだけれど、決断できないまま前に進んでしまう。



雨雲レーダーでは丹波市にはそれほどの雨雲があるようには見えない。北の宮津や福知山にかかっている雨雲も南下せず間もなく東に移動するという予報だ。カッパもあることだし、この後それほどの難路が待ち構えているようでもないので、もう少し進むとしよう。



三の山を過ぎたが、相変わらずの雨とガス。もっとも歩くには視界は問題ない。標識も充実してるし、連山縦走路を示すピンクのリボンが充実しているのであまり不安はない。ただズボンはいつの間にか雨でグッショリしてきた。



適当な場所があればカッパを着込もう、と思いながら進むが、雨に掛からず座り込めるところがない。展望所はいくつもあるものの、周囲は真っ白だし、雨除けもない。亜炭展望所って、このあたりでは褐炭が産出されたのだろうか、などと考えながら進んでいく。



時間もあるのだから雨が過ぎ去るのを待てばよいと考え、多少は雨を凌げる森の中で小休止。もっとも座るところもないし、風が寒いし、じっとしているのも辛い…。濡れ落ち葉を眺めながら、下り坂に落ち葉が積もっていたらよく滑るだろうな、なんてボンヤリ考える。



二の山(298m)、三の山(470m)、四の山(511m)、深坂北峰(521m)と登っては下りるを繰り返し、連山の主峰、向山(569m)に到着する。雨は小降りに戻り、山頂からは馬蹄形連山の外側にある春日の町が霞んではいるものの視認できるまでになってきた。



雨はかなり小降りになってきたが、樹木から垂れ落ちる雨露の攻撃は止まない。それにガスは相変わらず立ち籠めていて、視程は100mも無さそうだ。



連山の外側のガスはかなり晴れてきたようだけど、連山の内側にはまだガスが充満している。麓の町も、これまで歩いてきた山々も全く見えない。



道は決して悪くは無いけれど、落ち葉がうず高く積もった下り坂も多く、緊張感を強いられる。おそらく道自体が整備されているためか、濡れ落ち葉が積もっても見た目ほどには滑らずに済んだのが幸いだった。



岩場も多い。さほどの難所ではないのだけれど、バランスを取るために素手で岩を掴むと、その冷たさに驚く。かなり気温も低いようだ。



五の山(591m)を過ぎ、蛙子峰(562m)までやってきた。ちょうど時計の3時地点。ようやく半分歩いたことになる。「蛙子」は「ガエルゴ」とルビが振られている。日本語では滅多に見かけない迫力ある文字の並びだ。



縦走路から少しだけ寄り道をして珪石山(557m)までやってきた。時計の4時地点だが、このあたりでようやく雨は完全にあがった。結局カッパは着ずじまい。2年ほどリュックに入っているのだけれど、今もっておニューだ。使うのを惜しんでいるのではないのだけれど…。



珪石山という山名のとおり、珪石の採掘場がこのあたりにあったようだ。セメントとかガラスの製造に使うものだけれど、さほどレアなものではなく、高価なものではないはず。こんな山奥から運び出すほどの値打ちがあったのだろうか。



既に8座を制覇したけど、徐々に高度を下げていくはずとの期待を裏切るような急な登り坂が何度も現れる。さすがに疲れてきたぞ…。さほどの難路ではなかったはずだけれど、寒いなか、濡れた服のままでいることで余分に体力が奪われるようだ。



清水山(542m)の山頂にやってきた。連山の外側の町がかなり見えるようにはなってきた。山頂には大きな反射板が立っている。



清水山からはさすがに下りが多くなってきた。深い谷を横目で見ながら、巨石の多い道を下っていく。正面に見えるのはイルカ岩。イルカが海から飛び出す様をイメージしたネーミングだろうか。



山歩きで出会う岩につけられる名前としては、最多ではないかと思われる亀岩がここでも現れた。亀岩を撮影する際に、やけに日の光が眩しいことに気づく。



亀岩から間もなく、剣璽山(416m)の山頂までやってきて、馬蹄形の連山の内側に立ち込めていたガスもすっきりと晴れたことを知る。剣璽山は時計の7時地点。向こうに見えるのが、雨のなかを歩いてきた三の山(11時地点)、四の山(12時地点)のようだ。



10座を制覇し、あとは急な下り坂を下りていくだけ。油断はできないけれど、雨上がりとはいえ、危険地帯もなく、滑ることもなかった。



写真左側から右側へと向山連山を歩きとおし、無事下山完了。しばらく前までは雨が降り、ガスが立ち籠めていたのが信じられないような晴天だ。予定を大きく上回る5時間近くも山中にいたのだけれど、晴れたのは最後の1時間だけだった。



最後に水分れ公園を訪問する。水路の右へ行けば瀬戸内海、下に行けば日本海につながっているらしい。どちらも70㎞の距離だという。



本日の歩行軌跡。距離は7.1㎞、累積標高は717mと平凡なものだけれど、地図上に10もの山頂マークが記されている。YAMAPを使い始めて19か月、記録によれば94の山に登頂した(うち10山は今日なんだけど)ことになる。低山ばっかりだけれどもう少しで100山だ。