2020年12月12日
竜ヶ岳に登るため多可町にやってきた。せっかくなので隣の大井田山にも登る周回コースを歩いてみよう。と登り始めるときには気楽に考えていた。(その後、大井田山の厳しさを思い知らされることになる)
鹿柵を通り抜けて、赤いテープに従って林のなかの斜面を登っていく。あるような、無いような道が続くが、ふと気づけば、赤いテープが巻かれた木が、あちらにもこちらにもある。
さらに進んでいくと岩石地帯となる。さすがにここで道が違うと気づく。赤いテープは登山路表示ではなく、おそらく林業関係の何かの目印だったのだろう。今更スタート地点に戻る気にもなれず、正しい道の方角に向かって、山のなかを無理やり進んでいく。
序盤からいきなりの道間違い。時間と体力のロスは痛いが、気を取り直して正しい登山路にやってきた。常緑樹の伐採を進め、後継樹の育成を促進する取り組みをしているためか、登山路は明るく、眺望もある。道もよく整備されている。
最初は呑気に歩いていたが、どんどん斜度がきつくなってくる。急登を和らげるために道はジグザグ状の九十九折になっているのだけれど、それでも結構しんどい…。
さらに道の勾配はきつくなるが、階段状に整備されているのが有難い。この道を下りに使うと膝に来るだろうなぁ、などと考えながらガシガシ登っていく。
稜線近くまで登ってくると、露出した岩が多く見られるようになってきた。ロープの助けを借りて、落ち葉で滑る斜面を攀じ登っていく。記憶が曖昧だが、おそらく行程中ここが唯一ロープが設置されていたところだ。
稜線に出ると、さらに岩がゴツゴツとしている。岩山の上に薄っすらと土が被さっていると思われる稜線だが、意外にも高い木が生えている。岩の上に松が立っているようなところさえある。
地図の等高線では、稜線まで登れば、あとは比較的緩やかな道が続くように見えるのだが、実際の稜線は岩だらけ。狭い稜線に連なる岩を乗り越えたり、すり抜けたりしながら進まなければならない。
道を見失ってしまうことも度々。大岩に差し掛かるたび、どこから乗り越えていくのか考え込んでしまう。ピンクのテープを探しながら進むのだが、どう見たって進路とは思えない岩の上にピンクのテープがあったりして愕然とさせられる。
まるでゴジラの背びれのような稜線だ。尖った岩を時には乗り越え、時には回り込みながら少しずつ頂上へと近づいていく。油断できない道を進むに従い、体力も気力もどんどん削られていく。この種の道は苦手だ。
頂上がすぐそこに見えるところまでやってきて、ようやく下界が展望できるところに出てきた。かなりガスが立ちこめている。風が強いせいもあるが、急に寒気を感じてきた。
大井戸山の頂上。標高は794mだ。いかにも頂上といった感じに尖がっている。
頂上でも木の隙間からの展望が楽しめるが、数分の間にさらにガスは濃くなってきたように思える。大井戸山は竜ヶ岳に登る前の前座だったはずなのに、すでに体力は半減している。この後どうしようか…。
竜ヶ岳に向かうのは半ば諦めたものの、同じ道を通って大井戸山を下山する気にもなれない。遠回りにはなるけれど竜ヶ岳に向かう稜線を進み、その途中の清水峠から下山することにしよう。稜線は相変わらずゴジラの背びれ状態だ。
大岩が目の前に現れる度に、岩を乗り越えるのか、右か左から岩の横をすり抜けていくのかの選択を迫られる。頼りになるのはピンクのリボンだけなんだけど、見当たらないところがいくつもある。
滑落の危険がある岩の横のすり抜けよりも、無理やり岩に直進していく方が結果的には無難であることが多い。いくつもの岩を乗り越えていくと、徐々に岩が小さくなってきたようだ。
稜線の岩が明らかに小さくなり、跨げるほどの大きさになってきた。こうなれば稜線が少々狭くとも大丈夫だ。
急な下り坂などもあったけれど、大井戸山から清水峠までの道の後半は、さほどの難路でもなく、無事清水峠まで下りてきた。
ここから下山するか、頑張って竜ヶ岳に登るか、休憩しながらの長考に入る。竜ヶ岳までは1時間半もあれば往復できるはず。時間はあるし、体力もかなり回復してきたが、休憩で汗が引くとともに寒さを感じ出したせいか、気力は逆に萎えていく。
迷うのなら、やめておくべきだろう。竜ヶ岳への道は、大井戸山への道に比べて整備が進んでいるようにも見えるが、清水峠からの下山を決断する。岩がゴロゴロとした杉林の中の長い長い山道を歩いて、スタート地点のラベンダーパーク多可へと戻っていく。
大井戸山の山容。確かに尖がってはいるけれど、問題は勾配ではなく、岩稜だった。少々の勾配はゆっくり登れば済むことだけれど、滑落経験者の性なのか、足元がおぼつかない岩稜を進むことに対する怖れは容易には対処できない。
歩行軌跡。距離は7.2㎞、累積標高は700m。週末というのに山中では誰一人とも出会わない寂しい道だった。赤いルートを行く予定だったものが、竜ヶ岳へのピストンを断念してしまった。スタート直後の道間違いもしっかりと記録に残っている。
標高軌跡。確かに急勾配ではあったけれど、標高グラフには現れない標高700m付近の岩稜歩きが一番辛かった…。荒地山でちょっとは回復した岩場に対する自信が、再び地に墜ちたような気がする。