石戸山・高見城山(丹波市)

2021年11月12日


丹波市の石龕寺(せきがんじ)の奥に連なる石戸山や高見城山を巡る山歩きに出掛ける。かなり急峻な登り下りがあるというが、それだけに急峻な地形を利用した山城など南北朝時代の古跡も多く見られるようだ。



聖徳太子による創建と伝わる石龕寺からスタート。「龕」とは仏像を安置するための岩壁の窪みのこと。聖徳太子が物部守屋との戦った際に、飛散してしまった兜に付けていた毘沙門天の尊像がこの地で見つかったそうだ。足利尊氏が深く帰依したことでも知られる。



紅葉の名所として知られる石龕寺は、この時期のみ拝観料を徴収している。しかし参拝客で賑わう石龕寺をゆっくりと拝観するのは下山後の楽しみとして、境内の裏手から奥の院へと登る急峻な山道を登っていく。



20分ほどの急登で息も切れ切れとなったところに、奥の院の鐘楼が設置されている。自由に撞けるようだけれど、周囲の山々一帯に鐘の音を響き渡らせるのは躊躇われる。奥の院にも立ち寄らず、本日の第一峰となる頭光嶽を目指す。



頭光嶽まではさらに急坂が続く。休憩がてら聖徳太子の毘沙門天像が発見されたという石窟があるという奥の院を参拝すればよかったと悔やまれる。しかしもはや休憩するような平地もなく頭光嶽の頂上を目指して岩の多い坂を攀じ登っていく。



頭光嶽(439m)。妙な名前の山だと気にはなっていたけれど、山頂に覆いかぶさるように鉄塔が立っている。木もほとんどない更地状態だが、まさかそのせいで毛の無い光った頭のようだということで名付けられたのでは、とさえ感じてしまう。



鉄塔の向こうにこれから向かう山々が見える。左奥に見える岩肌が露出している山が石龕寺の山号にもなっている岩屋山だろうか。山のかなりの部分が採掘のために削られてしまったと聞く。



石戸山へと向かう道はアップダウンはあるものの、頭光嶽までの急坂が凄すぎたせいか、大したものには感じない。せっせと歩いてはいるのに、とても肌寒く感じられて汗もかかない。



金谷「砿」山跡にやってきた。石を掘っていたので鉱山ではなくて砿山だ。約40年前まで、ここで輝緑岩やカオリナイトという岩石が採掘されていたという。当時の重機が40年間も腐食するに任せるかのように放置されているのが、何とも物悲しい…。



金谷砿山跡から石戸山に向けて登っていく。周囲は常緑樹ばかりで紅葉している木は見られない。なのに路上には落ち葉がうず高く積み重なっている。美しい紅葉を見せる落葉樹は魅力的だけれど、人知れず新しい葉に装いを変えていく常緑樹もまた興味深い。



石戸山(548m)に到着。一等三角点がある山頂部の木は伐採されて小さな平坦部はあるものの、眺望はまったく無い。疲労の具合によってはここで引き返すつもりだったけれど、気温が低めのせいかあまり疲れもない。予定通りさらに北にある高見城山へと向かう。



石戸山を過ぎると、これまで随所に見られた案内標識は見られなくなり、道がやや不明瞭なところも現れる。しかし基本的に尾根筋の一本道のため、安心して進んでいける。



高見城山は石戸山より60mほど低いとはいえ、意外なほどに下り勾配の道が続く。しかも尾根道のため見晴らしのよいところもあって、気持ちよく歩いて行ける。



高見城山の直前で、ようやくこれまでの下りを取り返すかのような急登が現れる。でもこの岩を攀じ登っていけば、山頂のはずだ。



標高485mの高見城山では城の遺構は見られないけれど、丹波の山々を四方に臨む360度パノラマが楽しめる。2時間半ほど珍しく休憩無しで歩いてきたけれど、手作りの椅子に座らせていただき、ここでひと休み。ところが座り込むと風も強くて肌寒さが身に染みてくる。



高見城山は結局10分ほどで退散。来た道をそのまま石戸山に戻り、さらに岩屋山に向かう。石戸山と岩屋山の間の尾根道にはいくつもの大きな堀切が施されている。



岩屋山(標高506m)には、かつて高見城と連携する岩屋古城があったという。急峻な山に堀切なども施された要害だったと思われるのだけれど、戦国時代には織田軍に攻め落とされたようだ。



この山の麓が金谷砿山跡になっていて、城の主郭があった平坦地の大部分は採石のために削り取られている。山頂部からすぐに断崖絶壁になっているため、「この先あぶない」、「断崖に注意」といった注意標識が立てられている。



覚悟はしていたものの岩屋山から石龕寺に戻る道が長い長い超激下り。階段があるものの、躓きでもすればどこまでも転がり落ちてしまいそうな急坂に、腰が引けてしまう。



クサリ場も登場。岩場の下り方ってよく判らない…。登るよりも何倍も難しく感じる。周囲に誰もいないのが幸いだったけれど、傍目にはきっと笑っちゃうような不格好な下り方だったと思う。



急な階段や岩場を慎重に進んできたというのに、石龕寺までもう少しというところで緩い階段でズルっと滑ってひどい尻餅をついてしまう。蘇武岳からの続いた不転倒記録が6でストップしてしまった…。



尻餅をついてパンツは汚れたものの、無事石龕寺に下山してきた。遅ればせながら仏閣や庭園を拝観する。最大の見どころは仁王門で参拝者に睨みを効かせている金剛力士像。なんと1242年の製作だという。阿形像の写真がピンボケになったのが残念だ。



所々に真っ赤な紅葉も見られたけれど、紅葉の見ごろはもう少し先だったようだ。山に登れば更に紅葉が進んでいると思ったけれど、石龕寺の後背にある山ではほとんど常緑樹しか見られなかった。



本日の歩行軌跡。基本的には高見城山までのピストン。往路の序盤は右の頭光嶽経由、復路は左側の岩屋山経由。距離は8.6㎞、獲得標高は910m、所要時間は5時間19分。



標高軌跡にペース(対標準タイム)を重ねてみた。ほぼ標準タイムどおりに歩けていたのに、最後の激下りで急激なペースダウンをしている。