イタリ山・石金山(丹波市)

 2021年11月29日


ポンコツハイカーにとって兵庫県中北部の登山が難しくなる本格的な冬の到来まであと僅か。丹波市のイタリ山・石金山の縦走に出掛ける。南欧の国を連想させるイタリ山も、360度展望が楽しめるという石金山も以前から気になっていた山だが、結構な急登だと聞く。



山南であい公園。周辺市町と合併して丹波市となる前には、山南町の玄関口となっていたところだ。道に沿って金剛力士像が立っているが、先日訪問した石龕寺のもののレプリカらしい。何故か阿像はブロンズ像、少し離れたところに立つ吽像は石像だ。



まずはイタリ山へと向かう。どうやら元は「至山」だったようだ。なんの拍子でカタカナになったのかは判らないけれど、お洒落感は一気にあがる。もっとも石金山に登る前の軽い前哨戦のようなつもりだったのに、えらく登りが険しく、お洒落感など微塵もない。



30分近くの急登の後、大きなアンテナが現れた。てっきり頂上かと思ったけれど、イタリ山(273m)の山頂はさらに先にあった。YAMAPで「登頂した山」が記録されるため、ついでに登れる山はとにかく山頂まで行くようになってしまった。



イタリ山の山頂から少し戻り、あらためて石金山に向かうが、イタリ山までの道と違って随分と心細い道だ。やけに多く取り付けられてるテープやYAMAPが無ければ、ここを突き進むことは躊躇われるような、道と呼ぶにはギリギリの危なっかしさだ。



アップダウンを繰り返して進んで行く。ピークごとに何かのアンテナがある。「休憩所」と書かれているけれど、草ボウボウでベンチもない。大した眺望でもないし、どうしてここが休憩所なんだろうか。



ところが「休憩所」を過ぎると、長い下りの階段に始まって、平坦な場所がなかなか現れない。休憩所とは、ここで休憩しないと、この後登ったり下りたりが続きますよ、という意味だったようだ。



田高坂までやってきた。標識にある「山王仁王駅」とは鉄道の駅ではなくて道の駅だ。ここが石金山までの中間点なんだけど、既に1時間半近く経っている。ここで石金山までの所要時間が1時間も計算間違いしていたことに気付く。やばいぞ、日没との競争になりそうだ。



田高坂を過ぎると、さらなる急坂が続く。ありがたいことにロープが張られている。落ち葉も多く、ロープ無しではズルズル滑ってしまいそうだ。



せっかく登ったと思ったら、次には急な下りが現れる。疲れる割には標高はぜんぜん上がっていないような気がする。



またまた鉄塔があるピークまでやってきた。正面に見えるのが目指す石金山かと思ったけれど、地図で見ると石金山は正面のピークの更に奥に控えているようだ。まだまだ先は長そうだ。



石金山へと近づくにつれて岩が目立つようになってきた。いよいよこのコース最大の難所である天狗岩に近づいているようだ。



出た~。これが天狗岩か。いかにも天狗が団扇を仰ぎながら座っていそうな、切り立ったゴツゴツした岩が行く手を遮っている。無難に登れそうなところが見当たらず、岩の右に回ったり左に回ったりする。



木の陰に隠れて見えにくかったけれど、登攀用のクサリがあることに気付くが、これが切り立つような岸壁。ほとんど腕力だけで登っていかなければならないような角度だ。



石金山の山頂手前で再び、長いクサリ場。もうすぐそこが頂上だと判っているだけに、最後の力を振り絞って急坂に食らいつく。やれやれ、こんなに腕が疲れる登山はあまり経験がないぞ。



登り始めて2時間40分で石金山(568m)の山頂に到着。噂どおりの360度の大パノラマだ。東西南北の丹波の山々が広く見渡すことができる。一見鳥の巣箱のような山頂碑の上にある箱のなかには登山ノートなどが収納されている。あまり見ないタイプの山頂碑だ。



四方に見える山々が記された円盤状の図面がある。天候が良いこともあって、図面に描かれている山のほとんどは、しっかりと目視できる。さらに条件が良ければ明石海峡や淡路島まで確認できるようだ。



極めて居心地の良い山頂だったけれど、時間の余裕がない。名残惜しいけれど休憩もそこそこにして、登ってきた斜面を注意深く下りて行く。登りよりも下りの時の方がロープの存在が有難い。



天狗岩の手前で小新屋観音に向かう道に進路を取る。天狗岩を下るよりはマシとはいえ、この道もなかなかの急斜面が続く。路上の落葉も多く、油断すればズルッと滑り落ちてしまいそうな道を注意深く下りて行く。



小新屋観音。紅葉の名所として有名なところだけれど、既に紅葉のピークは少し過ぎてしまっている。もう1週間も前ならば、渓流に沿ったモミジの木々の景色はもっと素晴らしいものだったに違いない。



既に多くの葉を落としてかなり寂しくなったモミジの枝の隙間を通して、先ほど登った石切山の山容が見える。



厄介なことに、小新屋観音からは山裾の里道を4㎞以上も歩いて戻らなければならない。かなり退屈な道だが、登った山を違う角度から改めて眺めることができる。加古川に沿った道の正面(写真左)に、尖がったイタリ山が見える。川に映った「逆さイタリ」も楽しめた。



歩行距離は9.5㎞。もっともそのうち後半の4㎞ほどは平坦な里道なので、実質的な山歩きは5㎞くらい。獲得標高は760m、所要時間はちょうど5時間。当初の計算が間違っていて4時間で歩けると勘違いしていたけれど、なんとか真っ暗になるまでにゴールに辿り着けた。



標高グラフと歩行ペース(対標準タイム)。