上郡アルプス(上郡町)

 2021年11月5日


少し早起きして上郡アルプス縦走のため、山陽本線の兵庫県内西端、上郡駅にやってきた。大正4年築の切妻屋根木造駅舎だ。鳥取へと繋がる智頭急行のターミナルにもなっていて駅前にはタクシー乗り場もある真新しいロータリーを8時40分に出発。



ほとんど立ちっ放しの2時間の電車移動のせいか体がだるく、更に昼飯の調達のためのコンビニが駅前に見当たらず少々焦ったけれど(幸い歩いて5分ほどのところにローソン発見)、駅から20分ほどで登山口までやってこれた。駅チカ登山なのは嬉しい。



しばらく進むと「ヤングコース」と「シルバーコース」の選択を迫られる。危うく挑発に乗りそうになるけれど、岩ゴツゴツのヤングコースではなく、無難そうなシルバーコースに向かう。1分も歩けば再合流するのだけれど、序盤からの無駄な体力消耗は避けたい。



今日は、まず城跡がある生駒山、そして大鳥山、鍛冶山、舟谷山、鳳凰山を経て岩木山まで歩き。再び大鳥山まで戻り一本松、大観峰、小美女平、羽山を経て下山。計10山(のべ14ピーク)の縦走という長丁場だ。しかし序盤から岩稜の急坂が容赦なく体力を奪っていく。



岩っぽい尾根を登り切り、紅葉が始まっている生駒山(262m)の頂上までやってきた。赤松円心が築いたという駒山城の本丸があったところだ。白旗城の西を守る支城だったそうだけれど、自然の地形を生かして2つの峰に本丸と二の丸が設置されている。



二の丸からは激下り。「これより危険、転倒多し」の注意がある。人一倍躓くことや転ぶことが多い自称転倒王だけに足元をしっかり確かめながら、ゆっくり確実に下りて行く。今日も転ばず、有子山、御嶽・西ヶ嶽、文太郎道に続いて不転倒でいきたいものだ。



二の丸から下山し、大鳥山への登り返しのところには大きな堀割の跡がある。説明板があって、ここには跳ね上げ橋があったらしい。中世の山城としては、かなり高度な技術が採用されていたのではなかろうか。



大鳥山に向けて、ロープの助けを借りながら岩の斜面を攀じ登っていく。まだ2座目だというのに、キツイぞ…。こんな調子でこの先大丈夫なのかぁ?



大鳥山(280m)。小さな山頂碑があるだけだけれど眺望はいい。ここから西へ岩木山まで縦走し、再び大鳥山まで無事戻ってこれるだろうか。まだまだ先は長い。



幸い大鳥山からは、しばらくなだらかな道が続く。「上郡アルプス縦走路」の標識も要所に設置されていて、安心して進むことができそうだ。



さほどの急坂が現われなかったこともあって鍛冶山(276m)、舟谷山(210m)を順調に制覇していく。ちょっと調子があがってきたぞ。しかし奥に見えるちょっと尖がった山が目指す岩木山のようだ。まだまだ先は長そうだ。



順調に歩いていたところが、鳳張峠で赤いテープに導かれて誤った道へと入り込んでしまう。徐々に道が狭くなるうえに下りが続くので「おかしい」と早いタイミングで気付くことができた。今日は珍しく冴えているぞ。



鳳凰山(312m)に向けての最後の登り。生駒山や大鳥山に比べれば大した坂は現れない。この辺りの地名には大鳥とか鳳という文字が多いが、幕臣として五稜郭の戦いで伝習隊を率い、明治新政府でも要職を歴任した大鳥圭介はこの辺りの出身だ。



岩木山が少しずつ近づいてきた。振り返ると、今まで歩いてきた山々の遠く向こうに上郡の町が見える(写真右奥)。



11時50分、岩木山(344m)の山頂に到着。登山道はよく整備されていたけれど、山頂も木が伐採されて見晴らしがいい。もっともその分、日陰が少なく、この時期にしては強い日射しの下で弁当を食うことになる。



昼食休憩を終え、歩いてきた道を戻る。途中「航空機ビューポイント」という気になる場所があり、岡山~羽田のフライト時刻表まで掲げられている(6年前のものだけど)。岡山空港まで40㎞強もあるので、あまり迫力のある機影は見えないように思うのだけれど…。



往路では大した坂は無いと感じていた大鳥山への道なのに、帰路では結構足腰に応える。しっかりと昼食休憩は取ったけれど、やはり足腰にはそれなりの疲労が溜まっているようだ。



大鳥山に無事戻ってきた。ここからは生駒山へと戻るのではなく、周回コースで大観峰などを経由して上郡の町へと下りて行く。生駒山のような急坂ではないことを祈りながら、次のピーク、一本松へと進んで行く。



一本松(290m)。少しずつ上郡の町が大きく見えてきた。どこにもそれっぽい松の木は見えない。山の名前って誰がどう決めたのかは知らないけれど由来不明のものが多い。それでもとても由来が気になるものだ。



大観峰頂上への最後の岩のぼり。たかが標高270mではあるけれど、上郡アルプスのなかでも最も大仰な山名を冠している。阿蘇山の大観峰は徳富蘇峰の命名だと聞くけれど、そのオマージュなのかなぁ…。立山にも大観峰があったはずだ。



小美女平(193m)。これまた気になる山名だ。立山にある美女平が由来だろうか。大観峰も美女平も行ったことがあるけれど(もちろんケーブルやロープウェイで)、当然景色は随分違う。上郡アルプスだけに、北アルプスの地名を拝借したのだろうか。



大倉山から登ったり下ったりの繰り返しが続く。心配していたとおり、どこでも下りの勾配は緩いものではなく、ガレ場化しているようなところが多い。ロープにしがみつきながら、ゆっくりと下りて行く。登りは嫌いだけれど、下りは好き嫌い以前のこととして苦手だ。



ついに最後のピーク、羽山(192m)に到着。これで10山制覇になる。あとは転ばぬように安全に下山していくだけだ。経験上、気の緩みと体の疲れのせいで下山直前に転倒することが圧倒的に多い。



今日も無事転倒せずに山歩きを終え、15時頃に上郡駅に戻る。距離10.5km、獲得標高900m、コースタイムは6時40分だった。



自分なりにせっせと歩いたつもりだけれど、標準タイムには劣後していて、YAMAPのペース判定は今日も「ややゆっくり」。2.9㎞付近は石垣などが残る城跡をじっくり観察していたためだけれど、8㎞付近からの激下りでは標準タイムの70%までペースダウンしている。