山麓リボンの道(2)新神戸~東須磨

2020年6月23日

「山麓リボンの道」踏破に向けての2日目。切符売場などと並んで「布引の滝」の表示がある案内板がある新神戸駅からスタートする。前回は東灘区、灘区を踏破したが、今日は中央、兵庫、長田各区を制覇して須磨区に入ることが目標だ。



新神戸駅の北側に広がる大自然の中で静かに佇んでいる徳光院。由緒ある古刹に見えるけれど、川崎重工の創業者の発願により開基されたのは100年ほど前のことらしい。室町中期の多宝塔をはじめ、山門や鐘楼などは県下の各地から移築されたものだ。



布引の滝。那智、華厳とともに、平安時代からの名勝で、日本三大神滝のひとつに数えられているという。峡谷のなかにはマイナスイオンが充満しているように感じる。



滝からの渓流に沿って新神戸駅方面に戻る。深山幽谷の雰囲気が10分ほどのウォーキングで得られる新幹線駅は他にあるのだろうか。滝を詠んだ歌碑が滝からの渓流沿いにいくつも設置されている。



新神戸駅の北から西に向かう道が続いている。背山散策路というらしいが、まさに山際を歩く楽しい道だ。北野の異人館街に繋がっているようだが、新神戸から布引の滝や北野異人館街を巡る楽しい散策コースになるんじゃないだろうか。



 散策路のすぐ頭上を布引ハーブ園に向かうロープウェイがひっきりなしに通り過ぎる。そして散策路の地下には、山陽新幹線や山麓バイパス道路などが走っているはずだ。



楽しい背山散策路は20分ほどで終わり、観光客が多く訪れる北野の異人館通りに下りてきた。青空に風見鶏の館がよく映える。最近少し改装されたのだろうか。気のせいか外壁の茶色が濃くなったように感じる。



北野からさらに西へ、道路の名前は山麓線だけど全くの街歩きになる。以前から気になっている「移住ミュージアム」が併設された「海外移住と文化の交流センター」がある。累計40万人もの移住者がここで10日間の渡航準備をし、ブラジルなどに旅立ったという。



山麓線から北へ、金星台と諏訪山を一巡する。諏訪山に鎮座する諏訪神社。ありがちな稲荷社のようだけど、なぜかこの神社をサポートする人の多くは在留外国人(特に華僑)だという。



中央区を突き抜け、兵庫区に入る。坂道を登って神戸市内の一宮神社から八宮神社までの生田裔神八社を歩き回った八社巡りで参拝した五宮神社を再訪する。境内の敷地をはみ出すような巨木が印象的だ。



ここでいいのかぁ?山裾に貼りつくように立っている住宅の間をすり抜けるように西へ西へと進む。



お洒落都市神戸のなかで、昭和のレトロ感を色濃く残した湊山温泉。平清盛も入浴したとも伝わる源泉かけ流しの浴場だ。入口の自販機で飲み物を買ってベンチを拝借して休憩していたら、真昼間にも関わらず次々と入浴客が訪れる。



 新湊川水系の渓流に沿って山道を歩いていく。次に目指すのは烏原貯水池だ。こんな道でも街路灯が設置されている。山間の傾斜地では昼時でも薄暗くなることが多いので、街路灯は決して無駄とは思えない。ましてや右下は深い渓谷だ。



烏原貯水池。明治時代、この貯水池の建設で烏原村の98戸が池の底に沈んだ。護岸には烏原村で当時使われていた石臼がいくつも埋め込まれている。



烏原貯水池の南にある氷室神社。貴人に氷を献上する氷室をお守りする神社だと思っていたのだけど、やけにポップな雰囲気だ。長寿、家内安全、さらにコロナ退散など各種の幟が立ち並び、万能神社の趣きだけど、メインは恋愛成就。とても人気が高いらしい。



本殿の奥には、氷室が残されている。入るなとは書かれていないので、中を覗いてみたけど真っ暗でただただ不気味でしかない…。



奈良の氷室神社とは随分とテイストが違う。氷室以外には氷に纏わるものが無いなぁ…と思っていたら、ありました。「氷の聖地」の幟とフィギュアスケーターの看板。なるほど、確かに氷だ。



高層住宅が立ち並ぶ夢野にやってきた。山を切り開いて造られた市街地にありがちな結構急な坂道が続く。「夢野」という地名は、間違いなく住宅開発とともに付けられた新しいものと思っていたが、西行法師の歌にも残る古くからの地名だと知る。



長田区に入り、高取山の東麓で平盛俊の碑に出会う。一の谷の合戦で勇猛で鳴る盛俊はこの地の守将を任されていたが、情の厚さが裏目に出て源氏の騙し討ちに合ってしまう。この種の碑を見ていつも感じるのだけど、敗軍の将を称える日本古来の文化は誇らしい。



山麓リボンの道は、高取山の東麓にある西谷公園から、高取山への登山路へと続く。六甲縦走のなかでは、最も組みしやすい高取山だけど、これ以上登らなくてもいいじゃないかと愚痴りたくもなる。



高取山の斜面を物ともせず、多くの住宅が立ち並んでいる。坂道と階段ばかりの住宅街だ。



あらかじめ地図を見て、頂上までは行かないことは判っていたけれど、道はドンドン登っていく。結局山を下るまでに標高の半分近くも登らされてしまった。



高取山の下山道。深い森が続く向こうに神戸の街がチョコっと顔を出している。



板宿の街まで下りてきた。もう既に須磨区だ。複雑な住宅街を進み、山陽電車の東須磨駅まで歩く。これで全行程の三分の二を踏破したことになる。あと1日で完全制覇となりそうだ。



歩行距離は15㎞強。市街地と行ったり来たりとはいえ、布引、諏訪山、烏原、高取山など、いかにも山麓らしいところを歩かされたがなかなか楽しいウォーキングだった。