福知山線廃線跡探索(生瀬~武田尾)2020

2020年6月1日


久しぶりに福知山線の廃線跡に出かける。以前はおそらくJRが安全に責任を持てないことから雑誌やTVでの紹介もされていなかったところだ。噂を聞きつけ廃線跡を訪れるハイカーは少なくなかったのだけど、見て見ぬふりをしてくれていたのだろう。しかし3年ほど前に安全対策が講じられ、晴れて地元の観光協会も取り上げるような存在となった。



JR宝塚線の生瀬駅をスタート。以前には無かった案内標識もできている。1980年代の福知山線複線化のため、狭い武庫川渓谷沿いの路線を廃止し、生瀬駅から長いトンネルを掘削した新線に切り替えられている。



廃線跡の入口に、なんとコロナ感染防止のため来訪は遠慮してくれとの貼り紙がある。緊急事態宣言は既に解除されているのに…。が、西宮観光協会に電話してみると、本日付で来訪禁止は解除されたので、三密に気を付けて訪問してくださいとのことでホッとする。



武庫川沿いの廃線跡を歩き始めると、様子が少し変わっていることに気づく。以前はこんな綺麗な橋ではなかったはずだ。おそらくハイキングコースとして開放するにあたって、色々と手を加えてくれたのだろう。



これは8年前に撮影した写真。以前は鉄板を敷いただけの簡単な橋だった。滑りやすいし、手すりも低い。



ところどころに残る古い鉄道設備はそのまま残されているようだ。これは物見台のようなものだと思うのだけど、フェンスで囲われている。このフェンスも昇降階段の腐食が進む物見台に登ったりして怪我などしないように、との配慮なんだろう。



さあ、ひとつ目のトンネル、北山第二トンネル(319m)だ。この廃線跡の一番の醍醐味はトンネルの中を歩けるところだ。武田尾までの数㎞の間に長短6つものトンネルがある。



トンネル内は真っ暗。ヘッドライトと懐中電灯のダブル装備でトンネルを進む。出口の明かりが差し込まないところではフラッシュを焚いたくらいでは何も映らない。確かにトンネルって多数が入り込むと三密になりうるので、自粛解禁に慎重だったのかもしれない。



半ば朽ち果てた枕木が、今も整然と並んでいる。古い枕木の道に醜さなど微塵も感じられず、むしろ美しい。還暦を過ぎ、自分も斯くの如く美しく老いたいと願う。



枕木の道は、武庫川渓谷に沿った静かな緑のなかを通り抜けていく。「危険・転落注意」の古い標識が残っている。おそらく保線員に向けての警告だったのだろう。



北山第二トンネル(413m)。廃線跡のなかでは最長のトンネルになる。トンネル入り口には緑が覆いかぶさり、何かの秘密基地のようでもある。



武庫川渓谷の眺めも素晴らしい。ゴロゴロと転がっている奇岩・巨岩の間を、丹波篠山の源流から流れ込んだ水が、勢いよく奔っていく。



武庫川渓谷沿いの鉄道敷設はかなりの難工事であったことが想像できる。足場の悪い地形で急流と岩山の間に平坦な土地を造成するだけでも大変だ。複線化のための拡幅を諦めたのも頷ける。



おそらく枕木のストックなのだろう。線路脇に角材が積まれている。出番を得ることもなく、何十年もここに積まれていると思うと、ちょっと悲しくなってしまう。



清滝尾トンネル(149m)。武庫川渓谷の崖ギリギリのところにトンネルが掘削されている。



清滝尾トンネルを抜けるところがこの廃線跡のハイライト。トンネルの出口がそのまま第二武庫川橋梁へと繋がっている。




無骨な鉄骨で支えられた鉄橋の向こうには再びトンネルが現れる。長尾山第一トンネル(306m)だ。しかし、この鉄橋も以前と様子が違う…。



2012年に撮影した写真を確認してみると、以前は今のような立派な橋は無く、角材をひとつひとつ踏みしめるように渡らなければならなかった。真下には武庫川の急流が流れていて、足が竦むような思いをしたことを思い出す。



ちょっと寄り道をして、武庫川の流れが穏やかになっている地点で川岸まで下りてみる。先ほどまでの急流とはうって変わってゆったりと水が流れている。わずが1㎞ほどで川の様子も随分と変わるものだ。



長尾山第2トンネル(147m)。短いうえに直線なので、入口から出口までを見通すことができる。



最後のトンネルが長尾山第3トンネル(91m)だ。6つのトンネルを歩いてきたけど、入り口の造りも雰囲気も、同じものはひとつとして無い。



廃線跡歩きを終え、武田尾駅にやってきた。武庫川に架かる橋上駅だ。



この駅のユニークなところは、宝塚方面からのトンネルを出たらすぐに鉄橋(駅)になっているところ。



さらに鉄橋を渡ると再びトンネルとなる。さきほど歩いてきた廃線跡の「清滝尾トンネル~第二武庫川橋梁~長尾山第一トンネル」が再現されているようだ。武田尾駅の半分は橋の上、残り半分はトンネルの中という、極めて珍しい駅構造となっている。



本日の歩行軌跡。全歩行距離は7㎞だが、このうち廃線跡は4㎞強といったところだろう。