御嶽山清水寺(加東市)

 2021年10月18日


推古天皇と聖武天皇の勅願により建立されたという古い歴史を持つ播州清水寺に向かう。もっとも清水寺は標高552mの御嶽山の山頂近くにあり、参拝のためにはちょっとした登山が必要だ。



もっとも自動車道も整備されているので車での拝観も可能。道には有料道路のゲートのようなものがあり、1人500円の入山拝観料を支払う必要がある。



ゲートの傍に登山者用の入口がある。この道で歩いていくなら入山拝観料は不要なのだ。



杉林に囲まれているため眺望は全くないけれど、九十九折になった緩やかな道は快適だ。しかも随分と涼しくなって、そのせいか虫などに煩わされることもなく歩きやすい。



道は緩やかだけれど、路面は結構ゴツゴツとしている。とはいえ、トレッキングシューズでなくとも楽に登っていける。登山をしているという感覚もなく、清水寺に向かう道をのんびりと進んで行く。



登山口から一丁ごとに石標が立っている。いくつかベンチもあり、ところどころには手摺りもある。要所には側溝もあるので、降雨時でも問題なく登れそうだ。最高レベルに整備された登山道だ。7~8歳と思われる子供達も元気に下山してきた。



頂上に近づくにつれ、岩ごつごつの道は、根っこでごりごりの道へと変わるが、登山口から下りがまったく無く緩やかな登りが続く。ゆっくり歩いているせいか、まるで汗をかかない。



清水寺へと続く最後の階段にやってきた。階段の下に「右 法華山」の道標がある。法華山とは西国三十三所の二十七番札所の法華山一乗寺(加西市)のことのようだ。二十六番札所の御嶽山清水寺から歩けば20㎞くらいはあるはずだ。



長い階段の脇には、古い石垣が多く見られる。清水寺は100年ほど前の火災であらかた消失してしまい、ほとんどの建物は大正時代に再建されたものだけれど、石垣はそれ以前のものが多く残されているようだ。



階段を登り終えたところに、「山の上の引退ポスト」の案内板がある。インスタ映えするとのことで、このポストを目的に清水寺にやってくる人も多いと聞く。



今もよく見られる戦後製の「1号丸型」ではない。おそらく大正から昭和初期のポストだ。郵便取出口に多くの賽銭が置かれていることには違和感を覚えるが、鮮やかな紅葉の時期になれば、くすんだ赤色ポストは逆に渋く深い熟成感を発して存在感を一層増すに違いない。



ポストだけではなく、周囲の建物にも渋みを感じる。いぶし瓦には「播磨国」「御嶽山清水寺」の文字が見える。淡路産が有名な「いぶし瓦」だけれど、播磨にも多くの瓦屋さんがあったはずだ。



聖武天皇の勅願で建立されたという大講堂。紅葉のシーズンになれば夜にはライトアップされるという。



大講堂の正面にはモミジの木が多いけど、側面にはイチョウの木が並んでいる。秋が深まれば、すばらしい光景になることだろう。ただ、今は落果したギンナンの匂いがたちこめている。



大講堂の前に、加東市が開催中の義経伝説スタンプラリーの看板がある。搦手軍を率いて一の谷合戦へと向かう義経が、三草山合戦などで平家軍を退けながら現在の加東市を行軍したことに因むもので、市内15ヶ所にスタンプポイントが設けられている。



看板の画像にスマホをかざすと、イラストスタンプがゲットできる。弁慶がこの清水寺で囲碁をした際に、負けた悔しさで叩きつけ黒石が碁盤にめり込んだ、という逸話を基にしたものらしい。この碁盤は今も清水寺に残っているそうで、一度見てみたいものだ。




引退した丸ポストの後任?と思われる、新型の角型ポストがある階段を登って根本中堂へと向かう。



根本中堂。こちらは推古天皇の勅願所だという。ここでもイラストスタンプをゲット。どうやら源義経らしい。ゲットしたイラストは、写真に重ね合わせることができるようになっている。



多宝塔跡。大正初期の火災の後に再建されたものが、昭和40年の台風で大破してしまったらしい。今は礎石や基壇は残るばかりだけれど、再々建の計画はあるのだろうか。




清水寺からもうひと息登って、御嶽山の頂上を目指すが、山頂があると思われる雑木林に道らしきものはない。無理やりGPSが示す頂上方面へと進んで行くが、山頂標識らしきものは見つからない。ここを山頂としよう。



薬師堂で3つ目のイラストスタンプをゲット。これは義経なのか、弁慶なのか…。今風のイケメンにデフォルメされて、なんだかピンとこない。イラストスタンプは10人ほどの作家が分担して描いているという。




清水寺でゲットしたスタンプは3つ。5つ以上集めれば特製ポストカードが貰えるらしい。あまり魅力を感じない賞品だけれど、それよりもスタンプポイントの多くが義経伝説と無関係の集客施設・商業施設になっていることが参加モチベーションを削ぐ。



西国16番札所も清水寺(京都)なので、こちらは播州清水寺と呼ばれることが多い。それよりも気になるのが、看板の英訳。札所が"designated temple"となっているけれど、これでは指定文化財みたいだ。無理な英訳よりも"fudasho"の方がいい。



自動車道を歩くことは禁止のため、登ってきた道をそのまま下山。所要時間2時間、距離3.5㎞、獲得標高360mほどの、程よい山歩きだったけれど、やはり多少混雑していても紅葉のシーズンに来るべきだったと思う。