新龍アルプス縦走(たつの市)

2020年3月26日


これまでいくつもの関西ご当地アルプスを制覇したけど、最近「新龍アルプス」の存在を知る。新宮町と龍野市の間の山々であることから名づけられたのだろう。(今では新宮と龍野は合併し、たつの市となっている)室町~戦国時代の気になる山城が並んでいる。



播磨の小京都、醤油と素麺で有名なたつの市の龍野城から山に入っていく。新龍アルプスは、もともと新宮町と龍野市の間の山々であることから名づけられたのだろうけど、今や新宮町は龍野市と合併し、たつの市となっている。



これまで龍野城は何度も訪問しているが、庭園の隅っこに登山口があるなんて気が付かなかった。ここから鶏籠山の山頂にある龍野古城に向かって登っていく。



古城大手道と呼ばれる道を進む。確かにお城の大手、正面に続く道なんだろうけど、平城の大手通とは全く異なる。細くて急な坂道が続く。険阻なうえに、要所には土塁や切岸を構築し、要塞化していることが判る。



二の丸などいくつかの曲輪を経て、30分ほどで本丸跡に到着。標高218mの鶏籠山の山頂でもある。播磨の多くの山城同様に、ここも赤松一族が築いた城だが、秀吉に攻め落とされ、その後は蜂須賀正勝や福島正則など、秀吉股肱の武将が城主に就いている。



本丸跡の周辺には石垣が残る。おそらく室町~戦国時代のものだろう。戦国時代が終わると城は破却されたが、江戸時代に脇坂氏が現在の場所に龍野城を建てているのだから、この場所は400年以上も放置されていたはずだ。



鶏籠山をいったん下り、次は的場山を目指して、歩きにくいガレ場を下っていく。単なる登山と違って縦走は登ったり下りたりを繰り返すのがとても楽しい。



鶏籠山と的場山の間の鞍部は両見坂と呼ばれている。このあたりには山から侵入してくる不審者を取り締まる龍野藩の番所があったそうだ。今にも倒れそうにも見える石灯籠が置かれているが、絶妙のバランスを保っているようだ。



両見坂を過ぎると、一転して急な登りの道になる。露出した岩を両手両足で伝いながら登っていく。



的場山の山頂。標高は394m。大きな通信アンテナ設備が山頂付近に設置されている。頂上からの展望は良く、眼下には龍野の町が広がる。天気がもう少し良ければ瀬戸内海も見えそうなところだ。



 続いては亀山を目指す。途中名前もない小高いピークを上ったり下りたりしながら、北へ北へと進んでいく。



基本的に尾根道を歩いているため、樹木が途切れたところからは、新宮から龍野にかけて続く揖保川の流れと川の周囲に広がる集落がよく見渡すことができる。



標高458mの亀山(きのやま)山頂付近にある城山(きのやま)城跡。万人恐怖政治を敷いた6代将軍足利義教を暗殺した赤松満祐が奮戦空しく幕府軍に敗れて自刃したところだ。嘉吉の変が終結した歴史の大舞台なんだけど、特段の遺構は見当たらない。



遺構どころか、簡単な説明板があるだけで石碑さえ見当たらない。地面を見ると標札の一部だったと思われる「城」の一字が落ちている。寂しいところだ…。



亀山付近の立っていたかなり草臥れた山岳マップのなかに、ついに「新龍アルプス」の文字を発見する。ここまで新龍アルプスという字を見かけなかっただけにちょっと嬉しい。アルプスと聞けば、歩くモチベーションも随分と変わってくる。



亀山を少し下ったところにある亀岩。巨岩につけられる名前としては亀岩が一番多いのではなかろうか。硬くて動かない丸みのある大岩なら、亀岩と呼ばれる条件をほぼクリアしていると言える。この岩には首をもたげるような出っ張りがあるのでさらに亀らしい。



亀山、亀岩、と来て、続いては亀池だ。溜め池だろうか。山上にあるにも関わらず水面は穏やかで、岸辺は砂浜のようだ。



亀池から流れ出る渓流に沿って下山していく。坂は緩やかで、倒木や渡渉を楽しみながらのんびりと歩いていく。



亀池からの水を近隣の村々で激しく争ったことが記録されている。今歩いている道も自分の村に多く水を流すために勝手に築いた堤らしい。



山中に井関三神社の奥宮が現れる。巨石を背にして小さな祠がある。この岩はいわゆる磐座なのだろう。神様が鎮座する神聖な岩だ。



ここまで調子良く新龍アルプスを縦走してきたが、最後の最後、道が怪しくなる。どこかで間違ったのかもしれない。信用しきれるものではないのだけど赤いテープだけを頼りに消えかけている道を草木を描き分けながら下る。



幸い無事下山することができ、ひと安心。池の前に並ぶ6体のお地蔵様に無事を感謝して手を合わせる。



下山して、あらためて歩いてきた新龍アルプスの山々を眺望する。大した標高ではないけど、これくらいの山でも下手をすれば道誤りや滑落の危険はある。



麓の田畑は、山の動物たちに随分と荒らされているのだろう。動物除けの長い柵が見られる。「鹿さん、熊さん、タヌキさん、山野で遭ったら一杯やろう」と動物たちに呼び掛けている。動物たちとの共存共栄を願う気持ちが良く理解できる。



本日の歩行軌跡。新龍アルプスの山行は10㎞地点まで。そこから先の6㎞は平坦な舗装道を歩いて本竜野に戻った軌跡だ。