明神山(姫路市)

 2020年11月10日


姫路市北部(旧夢前町)にある明神山に出掛ける。やまクエの難易度レベルは27と低いけど、事前に調べたところでは厳しい岩場の連続だという。どうも嫌な予感がするぞ。登山口にあるハイカー姿の案山子に見送られて出発する。



いくつかある登山路のなかで、最も人気が高いと思われるCコースで登り、Aコースで降りるルートを選択する。どちらも岩稜を行く尾根道になる。



登山口から早速薄暗い森のなかを進む。なんとも不安な雰囲気が漂う。実は開始早々ルートを間違って歩いていたことに、この時は気づいていない。



どうもおかしい、とは思いはしたが、トレース(足跡)は多いのでそのまま進むが、ついに軟弱な地盤の坂を攀じ登らなければならない羽目に陥る。アチコチに先行するハイカーがずり落ちた形跡が残る坂を草などにしがみつきながら、やっとの思いで登りきる。



登り切ったところには、ごく普通の整備された登山道があるではないか。ここでようやく道間違いをしていたことに気づく。序盤早々から大ダメージだが、気を取り直して先に進んでいく。



しばらく進むといよいよ岩場が現れた。デッカイ岩を攀じ登りながら進んでいく。幸いグリップも効き、滑る心配はない。この種の岩場は決して嫌ではない。



岩に挟まれた細い階段が現れた。まさか腹がつっかえるなんてことはないよなぁ、と心配になるような狭い隙間だが、無理なく通り抜けることができた。



楽しく岩を攀じ登っていたのだが、いよいよ苦手な馬の背状の岩稜が現れた。滑るような岩質ではないことは判っていても、双方が谷底という細い岩稜を進まなければならないと思うだけで足が竦んでくる。



岩場もますます厳しいものになり、ロープを頼りに岩肌に食らいついていくが、岩また岩の登山路に徐々に心身の疲労が蓄積していく。



いい加減に勘弁してくれぇ、という気持ちになってくる。際限なく襲ってくるRPGのモンスターのように、息つく暇もなく岩の塊が次から次へと現れる。



登りだからまだいいけれど、この種の道を下っていくのは怖いだろうなぁ…、と早くも帰路のことが心配になってくる。しかし今はとにかく前に進むしかない。



標高が徐々にあがり、どうやら明神山の山頂らしきものが見えてきた。体力的にはともかく、気力的にかなりグロッキー状態なのだが、ゴールはまだまだ遠そうだ。



「がまん坂」と名付けられた急坂を攀じ登っていく。今更「がまん」でもなかろう。ここまでがまんの連続なのだから…。



明神山の前衛峰、地蔵岳の山頂に到着。なんと明神山の七合目との標識がある。まだ七合目かよぉ…、と、思わず腰を下ろして長めの休憩を取る。体力の回復よりも、岩稜歩きの連続で滅入った気力のリセットの方が必要だ。



悲しいことに、地蔵岳からいったん急坂を下り、折角稼いだ標高を吐き出すことになる。なるほど、地蔵岳までの「がまん坂」とは、この後下ることになるけれど、がまんして坂を登れということだったのか。



その後もロープにしがみついて岩だらけの急坂を攀じ登ったりして、少しずつ山頂へと近づいていく。



最後の最後まで安心できない道が続く。「明神山最大の危険個所」との注意看板がある明神のクサリ場を登っていく。不安定な岩が多く、手の掴みどころや足の置きどころを誤ると落石事故に直結しそうなところだ。



最後の難所、明神のクサリ場を過ぎて間もなく、ようやく明神山の山頂に辿り着く。別名夢前の播磨富士とも呼ばれる岩山だ。標高は668mでしかないが、厳しい登山路だった。頂上の岩場にある小さな祠に無事登頂のお礼をするとともに安全下山を祈る。



播磨から但馬にかけての山々が幾重にも重なっている。すぐ北に聳えるのは雪彦山、その奥には氷ノ山も確認できる。明神山でこれだけビビッていたら、雪彦山なんて到底登れそうもない。



山頂からの景色を楽しんだ後、下山に取り掛かる。落ち葉がうずだかく積もった急坂をロープにしがみつきながら下りていく。



快調に下山していたところ、雨がパラついてきた。天気予報では降水確率はごく低いものだったはずだけど、兵庫県北部に雨雲が確認できる。女心と秋の空とはよく言ったもので、特にこの季節の山の天気は変わりやすい。



Cコース同様に岩稜が続くといわれるAコースで下山するつもりだったのだけれど、往路での際限のない岩場に辟易としたこともあり、降雨を理由にしてAコースから分岐する谷筋のBコースで下山することに急遽変更。もっともこちらも急坂であることに変わりはない。



谷道なので眺望は望むべくもないが、杉林のなかの九十九折りの道は急坂とはいえさほどの危険個所もない。どんどん下っていくと黒い岩肌を滑るように水が流れる滑滝(長滑ら)が現れた。ここで突如2頭の鹿が目の前を横切った。熊鈴など気にしないのだろうか。



鹿も逃げない熊鈴が、熊に効果があるのかと考えながら更に下っていく。「この先の橋は崩落の危険あり」との標識が現れる。2本の橋のうち1本は完全崩落、もう1本も怖くて渡れるような状態ではない。沢に下りて渡渉したが、水が多かったら厄介なことだっただろう。



Bコースは総じて安心して歩ける道だったこともあり、下山時にはすっかり気力も回復。少し寄り道をして観音滝を見に行く。落差15mの滝だというが、水量が少なくポタポタと水が落ちているような状態…。



水量の多いときには滝の「裏」になると思われる観音様をお祀りしている洞窟にまで危なっかしい階段を上っていくが、足元が不安で、落ち着いてお祈りもできなかった。



最後に登山口から、あらためてCコースのどこで道を誤ったのかを見に行く。右側が開けているけれど、よく見れば正しいルートが左側であることは一目瞭然だった。



本日の歩行軌跡。休憩込みで4時間だというのに歩行距離は5㎞ほど。まあ登山の「しんどさ」は距離では測れない。ましてや「怖さ」の計測など不可能だけれど、やまクエの難易度レベル27はいくらなんでも評価が低すぎると思う。