笠形山(市川町)

 2020年11月19日


市川町、多可町、神河町の3町にまたがって聳える笠形山に登る。標高は939m、やまクエの難易度評価は現在の体力や登山技術の限界に近いとも思われるレベル39だ。いくつかある登山口のうち、最もメジャーと思われる市川町からの道を選ぶ。



神社コースで登り、仙人滝コースで下る予定。YAMAPによれば標準所要時間は登りが2時間40分、下りが3時間05分。標準時間の1割増しで歩くと考えて、さらに休憩も考慮すれば少なくとも7時間はかかりそうだ。気を引き締めて笠形神社の大鳥居から山に入る。



登山口に、クマ出没注意の貼り紙がある。今年9月に下山路に予定している仙人滝コースの蓬莱岩付近でクマが目撃されたという。明神山では鹿も逃げなかった熊鈴だけに心もとないことだ。



登山口からしばらくは緩やかな林道が続く。どうせこんな道はすぐ終わって難路になるに違いないと思いながら歩くが、意外にも1時間ほどは、このような整備された道が続く。



笠形山ということだろうか、ところどころにある東屋風の休憩所はどれも笠形の三角屋根だ。道がよく整備されているので紅葉を楽しみながら歩く余裕もある。



1時間ほど歩いて笠形神社にやってきた。神社の境内が黄色く染まるほど、黄色く色づいた木々とその落ち葉が古い神殿を引き立てている。



笠形神社の神木のヒノキが姫路城の昭和の大修理の際に城の心柱となったそうだ。平成の大修理の際にも心柱はそのまま残され、今も姫路城を支えているはずだ。



笠形神社を過ぎると、それまでの穏やかだった登山道は、狭いトラバースや長い丸太階段へと一変する。無言坂とも呼ばれる急坂を息を切らして登っていく。



岩がゴツゴツした危なっかしい場所も増えてきた。歩くスピードが落ちるとリュックに取り付けた熊鈴の音が小さくなるという当然のことに気が付く。立ち止まると当然鈴は鳴らない。仕方なく手で熊鈴を揺らしながら人気のない山道を攀じ登っていく。



笠形山の前衛峰となる笠の丸まで「もう一息」という看板が現れる。ここに来るまでも「もう一息」の看板が他にもあったけど、簡単には到着しない。励ましは有難いけれど、一息で到着しなかったときのガッカリ感は半端ない…。



急坂を登りきって笠の丸に到着。ここにも笠形の東屋がある。



笠の丸まで来て、ようやく笠形山の山頂が確認できるようになった。笠の丸の標高は883m、笠形山山頂との標高差は50m余りだ。



笠の丸から笠形山までの間の道は、再び総じて緩やかな斜面が続く。ジュウタン通りと書かれた落ち葉がうず高く積もる道を進んでいく。一年中落ち葉はジュウタンのように積もっているものなのだろうか。



途中大きな倒木が道を塞いだりしていたりもするけれど、ご愛嬌のレベル。序盤、中盤、終盤と全く異なる道に合わせてギアチェンジをしながら頂上に向かっていく。



頂上の直前に岩がゴロゴロしたややキツい坂があったけれど、登り始めて2時間弱で無事笠形山山頂に到着。なんと標準時間の7割ほどで登ってきたことになる。そんな早く歩けるはずがないと何度も時計を確かめるが、間違いなく2時間だ。不思議だ…。



あいにく山頂は風が強く、肌寒い。さらに空模様がいかにも怪しく、黒っぽい雲が垂れこめている。なんだか嫌な予感がするぞ…。



山頂で20分ほどの昼食休憩を取った後、笠の丸を経て、仙人滝コースで下山していく。やや遠回りにはなるけれど、その分斜度は緩やかだと期待したい。杉林はどこも下草が良く刈り取られているので道が判りにくいが、赤いテープが進むべき道を教えてくれる。



鹿ヶ原という平坦な低木地帯にやってきた。ウェルカムゲートのようなものが設置されている。



しばらく歩くと、続いて「ほうらい岩・仙人滝へ」と書かれたゲートが現れた。「危険なところがあるので気を付けてください」と書かれていたとおり、ここから急に道は荒れたものになり、落ち葉が積もる急坂をへっぴり腰でずり落ちるように下りていくことになる。



絶景が楽しめるという「ほうらい岩」の真上までやってきた。ごく最近熊が目撃されたという「ほうらい岩」は写真の岩の未だ20mほど下にあるらしいが、やめておこう。急な下り道を降りるのも怖いし、熊に遭うのも怖いし、足の竦むような岩場に立つのも怖い。



ほうらい岩を諦めて、仙人滝方面へと歩いていく。谷の向こうに絶壁のようなほうらい岩らしきものが木の陰に見える。



靴が埋まるほどに落ち葉の量が凄く、足場を目視できない。ポールで落ち葉を突きながら、次に歩むべき個所の安全を確かめながら進む。当然牛歩の如き歩みとなり、熊鈴が鳴らない。右手でポール、左手で熊鈴を操作しながら、急坂やトラバースを慎重に進んでいく。



仙人滝まで下りてきた。紅葉の陰に、水量は少ないが、黒い岩肌を滑るように落下する滝の姿が見える。



仙人の滝のあと、しばらくは岩がゴロゴロと転がる歩きにくい渓流沿いの道が続くが、それを過ぎると、穏やかな林道へと出る。登りのときの序盤と同様、長く続く平坦な林道を歩いてスタート地点に戻る。



9.5㎞ほどの登山道を、雨にも降られず、熊にも遭わず、レベル39ほどの疲れもなく、どうした訳か休憩込みで5時間も掛からず踏破することができた。もっともYAMAPによれば消費カロリーは2000kcalをゆうに超えているのでそこそこの運動量ではあったはずだ。