虚空蔵山(三田市)

2020年11月17日


三田市の虚空蔵山(こくぞうさん)に出掛ける。丹波篠山市との市境に位置する標高596mの岩山だという。足が竦むような岩稜歩きは得意ではないけれど、この山は子供でも登れるくらいにしっかりと整備されていると聞く。



JR福知山線の藍本駅をスタート。登山口までは30分ほど農地の中を歩いていかなければならない。まっすぐな道が山に向かって伸びているが、目指す虚空蔵山は写真右奥の山の向こうに未だ隠れている。



舞鶴若狭自動車道の高架をくぐると間もなく登山口が現れる。雑木林のなかのよく整備された山道を快適に歩いていく。



しばらく歩くと沢が現れる。このあたりは石舟と呼ばれる舟型の岩がある。この先に鎮座している虚空蔵堂の手水鉢になっているらしい。



沢に入ると石がゴロゴロと転がった道となり、急に歩きにくくなる。低山の軽登山とはいえ、岩山だと聞いていたので靴底の厚いトレッキングシューズを履いてきたのは大正解だった。



沢道を登りきると虚空蔵堂が現れる。兵庫県にも多い聖徳太子創建のお寺だ。でも高位にある聖徳太子が地方を訪れ具体的な建立を命じたのだろうか。作り話とは決めつけたくはないが「摂津と丹波の国境あたりにお寺を創れ」と都から指示したと考えるのが妥当だと思う。





虚空蔵堂を過ぎると山道は更に険しいものになる。岩や木の根を足掛かりに急な坂を攀じ登っていく。



頂上に近づくにつれて大きな岩がアチコチに現れだした。もっとも岩をある程度取り除いたり削ったりはしているのだろう。見た目ほど登りにくいものではないし、危ないものでもない。



いよいよ山頂部らしきものが見えてきた。山頂部全体がゴツゴツした岩で覆われている。



山頂に到着、と思って、岩の上で素晴らしい景色を堪能しつつ、腰を下ろして休憩する。が、よく見ると、ここより少し高いところが少し先にある。ここは頂上ではなく、丹波岩と呼ばれる岩塊らしい。



このあたりの岩は、すべてが、堆積の過程でできたと思われる1~2㎝ほどの層状になっている。おそらく元々は水平面に層があったものが、何の拍子か完全に垂直に立ち上がっている。頁岩と呼ぶものだろうか。しかし意外にも簡単に剥離はしない固さだ。



垂直に立ち上がった岩層はどれも南北方向に揃っている。よくは判らないけど、東と西からの何らかの力によって、このあたりの地層が押し上げられたものなんだろう。



丹波岩だけでも実に面白いところだったが、折角なのですぐ近くの頂上までやってきた。岩で囲まれた頂上だ。



山頂から北へ八王子山へと続く道が続いている。虚空蔵山と八王子山を含む連山は南北に連なっていて、岩層と同様に東西からの力で盛り上がった山々なのだろう。縦走することも考えたが、八王子山からの下山路がかなりヤバい激坂だという。



自分の技量に見合わない道を行くことは諦めて、無難に山の西側にある立杭地区へと下りていくことにする。下り坂は急だけど、簡易な階段が設置されているため、安心して山を下っていくことができる。



急坂を下りきってしまえば、あとは呑気に歩ける林道が続く。既に紅葉は終わり、落ち葉も風で吹き飛ばされているようだ。



最後は杉林の道を歩いて、立杭へと向かっていく。立杭焼で有名な陶器の郷だ。



紅葉が残る虚空蔵山の下山口になる立杭は丹波篠山市の南端。近くには、丹波伝統工芸公園「立杭陶の郷」や兵庫陶芸美術館などがあり、1時間に1本程度のバスの便がある。(この先になるとバスの便は一気に悪くなる)



次のバスまで40分ほどもあったので、陶器の集落を少し散策する。樹齢500年という巨大なアベマキの樹がある。環境省が日本最大のアベマキと認定している。アベマキって山歩きしていると頻繁に見かけるのにあまり知られていないのが不思議だ。漢字も超難しい。



最古の登り窯と言われるものがある。山の勾配を活かして1895年に造られたもので全長は47mもあるという。今も現役なんだそうで、定期的にこの登り窯で陶器を焼成するそうで、見学も可能らしい。



近くに寄って観察してみると、実に不思議な恰好をしている。巨大な蚕のようだ。窯のくびれや焚口や空気口など、長い歴史のなかで最適な配置を見つけてきた結果なのだろう。



道には、10mほどおきに立杭焼と思われる陶板が埋め込まれている。いくつも見て歩いたが、どれも絵柄が異なっている。



バスに乗る前にあらためて虚空蔵山の姿を仰ぎ見る。右に連なるのは八王子山だろう。歩いているときには紅葉をほとんど感じなかったのに、麓から眺めると山全体が紅葉しているように見える。不思議だ…。



本日の歩行軌跡と標高軌跡。歩行距離は立杭散策も含めて5㎞ほど。軽い山歩きだったけれど、丹波岩の迫力と眺望だけでも十分な満足感が得られるものだった。