白髪岳 & 松尾山(丹波篠山市)

 2020年10月20日


丹波篠山市の白髪岳に挑む。高所での岩稜歩きがあるという危なっかしい山に思えるが、やまクエではLV30の「初級」に分類されている。「中級」を数多くクリアしてきたのだから、どうってことはなかろう(とタカをくくっていた)。合わせて松尾山も制覇してやろう。



丹波篠山市の住山登山口からスタート。体調は悪くない。最初の1.5㎞ほどは、緩やかな林道を快調に歩いていく。



その後、本格的な登山道に入ると、道の様相は一変する。鬱蒼とした森のなかの急斜面を息を切らして登っていく。



トラバース道もかなり細くて危なっかしい。要所にロープが張られてはいるけれど、気の抜けない道が続く。



木の根っこと岩に足をかけ、ロープの助けを得ながら、急斜面を登るようなところが度々現れる。LV40の段ヶ峰に向かう途中の達磨ヶ峰の急登より、圧倒的にこちらの方がキツイぞ。堪らず急斜面の下で腰を下ろして休憩してしまう。



いい加減にしてくれ、と言いたいほどの斜面が続く。眺望もなく、ひたすら登るばかりだ。古傷のため右足を高くあげると股関節が痛む。日頃は慣れっこになっている痛みだけれど、今日は特に痛みを感じる。



ゼイゼイと息を切らしながら、ようやく眺望が開けた稜線までやってきた。ここまで来れば白髪岳の頂上はすぐそこまで迫っているはずだけれど、思わずベンチに座り込んで長めの休息を取る。



稜線を進むと、大きな岩場が現れた。これが白髪岳名物の噂の岩場か、と思いつつ、どこから登るのかを探るが、無難に登れそうなところが見当たらない…。何本かロープや鎖が吊られているけれど、どこをどうやって登ればいいのやら…。



ホンマにここを登っていいものかぁ? しかも登った後の道がどう繋がっているのか想像がつかない。あると聞いていた巻き道もどこにあるか判らない。意を決してロープにしがみつき、岩肌を攀じ登っていく。



ある程度登ったところで下を見ると、なんともヤバい…。降りることができないところは登らない、が個人的な鉄則なのだけれど、ここを再び下らなければならないのならばかなり厄介なことだ。



無事岩場の頂上に辿り着く。景色は素晴らしいが、足場の狭さと不安定さにゾクゾクとした体の震えのようなものを感じる。40mの滑落経験者だけに、この種の岩場で心の平静さを保つことは難しい…。



しかも、岩場の上から次にどこに向かって歩けばいいのか、判らない…。進むには進めるのだけれど、進んだ先がどうなっているのかの見通しが無いまま進んでいくのは、実におっかない。



もはや進むしかなく、ロープの力を借りて岩場を進んでいく。確かにロープのある方向に進めばその先に道は繋がっている。知っていれば躊躇なく、そして安全に進めるだろうが、初登頂のソロハイカーには不安一杯の岩場だ。もし悪天候なら到底対応できそうにない。



なんとか標高721mの白髪岳の登頂に成功。体力的にはまだ余裕があるけれど、岩場でビビりまくって気力は大幅ダウンしている。これが初級の山なのか? 登山に求めるものは人それぞれだけれど、個人的には「スリル」など一切求めていないのだ。



白髪岳頂上の休憩で多少は気力も回復し松尾山に向かう。ところが白髪岳からの下山路が、いわゆる「激下り」。あまり見たことも無い3~4本重ねのロープが道の左右に張られていなければ、どこまでも滑り落ちてしまいそうな急坂だ。



激下りで、再び気力は大幅ダウン。もうこんな山イヤだ、とも思う。木々の隙間から松尾山の山頂が見えるが、既に気力は萎え、松尾山に向かうことなくバイパス路で白髪岳登山道の途中に戻ることを真剣に考え始める。



しかしバイパス路はYAMAPでさえ破線扱い。実線表示の登山路でも難儀する低レベルのハイカーにはリスキーとしか考えられない。結局、時間は掛かるけれど、松尾山経由で戻る方が安全そうだと判断する。幸い平坦でフカフカの歩きやすい尾根道が続く。



が、平坦な道で山に登れるはずもなく、松尾山の手前で、林のなかの急斜面の直登を余儀なくされる。



標高685mの松尾山山頂は眺望もなく、登頂の達成感にも欠ける。山頂部は広い平地になっていて山頂らしくもないが、それもそのはず、戦国時代には波多野氏の前衛拠点として築かれていた酒井城の曲輪跡でもあるようだ。



さあ、後は下るだけなんだけど油断大敵。松尾山からの下山路が白髪山の登山路にも増して急勾配になっていることは事前にリサーチ済なのだ。千年杉と呼ばれる杉の老木が、ヨレヨレになって歩いているハイカーを励ましてくれているように感じる。



確かに勾配は厳しいのだけれど、道は九十九折になっているうえに、足元の岩もしっかりグリップが効く。ロープは設置されていないけれど、頑丈で掴むのに適当な太さの立ち木が下山路の脇に多くあることが安全な下山の大いなる助けになる。



何十基もの僧侶たちの墓が山の中腹にある。その形から卵塔群と呼ばれるようだ。松尾山はかつて仏教僧の修業の場であったという。



杉林のなかをひたすら下っていく。途中、蛇に3度も出会い、その度に気力ゲージはさらにダウン。体力的にはともかく、気力的にはギリギリの状態で下山する。



本日の歩行軌跡。距離は6㎞にも満たないが、山歩きのしんどさは距離で測れるものではない。白髪岳の岩場にはおそらく2度と登ることはないだろう。小野アルプスの紅山に次ぐ、2座めのNG山になる。



休憩込みで4時間足らずのトレッキングだったけど、序盤の林道と白髪山からの急降下の後の松尾山手前までの道を除いて、油断のできない厳しい道が続いた。やまクエではLV30だけれど、個人的評価はLV40だ。