大河内高原<峰山高原~砥峰高原>(神河町)

 2020年10月27日


神河町の大河内高原に出かける。大河内高原の北部には全国的にも名高いススキの群生地である砥峰高原があり、南部には一昨年スキー場がオープンしたばかりの峰山高原がある。今日は峰山高原と砥峰高原との間を往復するハイキングを楽しみたい。



スキーシーズンは未だ未だ先なのに峰山高原のスキー場付随のリゾートホテルは大勢の宿泊客で賑わっている。緑は美しいし、空気は美味いし、星も美しいはずだ。加えてGOTOトラベルの影響もあるのかもしれない。



「日本で一番新しいスキー場」というだけあって、リフトをはじめ施設の何もかもが真新しい。オフシーズンのスキー場では雪化粧の無い施設がいかに荒廃しているかを目の当たりにして愕然とすることがあるけれど、ここの施設は未だピカピカだ。



リゾートホテルの裏手から、砺波高原に向かって歩き始める。この峰山高原は、村上春樹の「ノルウェイの森」が映画化された際のロケ地になったそうで、ハイキングコースにも撮影地の案内がある。原本は随分昔に読んだけど記憶は朧気だし、映画も見ていない…。



ナラやクヌギの林に差し込む柔らかな陽射しと、落葉で覆われたフカフカの道…、のんびりと歩き始めたが、熊出没注意の看板を見て慌ててリュックに熊鈴を取り付ける。最近は熊の出没情報が多く、関西でも熊鈴を付けるハイカーを多く見かけるようになった。



山笑う登山口…なんじゃこりゃ? 何の説明もない。帰宅後調べると、この先に林道完成の記念碑があり、そこに「山笑う」とあるようだ。春に草木が一斉に芽吹き山が色づく様を表す言葉のようだ。



小さな渓流が多い。丸太で橋や歩行路が作られているのは有難いことだけど、丸太が軋んで結構危なっかしい。体重オーバーということかもしれないが…。



とても歩きやすい道なのに湿潤地が多く、靴がズボっと埋まってしまうこともある。湧水の多い高原のようだ。



ハイキングコースは林間に整備された遊歩道から舗装された林道へと続く。林道の脇に「峯山口駅」と書かれた標識が立っている。駅とはどういうことなのだろうか…。バス停でも無さそうだ。この辺りがハイキングコースの最高標高(1010m)になるようだ。



舗装道ではあるけれど、アップダウンもなく車は一台も通らない。ペースアップして砺波高原へと向かう。



しばらく舗装道を歩くが、再び森の中へとハイキングコースは続いていく。砺波高原はもうすぐそこのはずだ。



砺波高原にやってきた。高原ではあるけれど、周囲を山に囲まれた窪んだ茶色く染まった草原が広がっている。90haと言われる国内屈指のススキの自生地だ。春には山焼きが行われこの美しいススキの草原が保全されているという。



砺波高原のススキの見頃(10月中旬から11月中旬)のど真ん中だけれど、思ったほどにススキの背は高くなく、茎も太くはないように感じる。先日の段ヶ峰のススキがあまりに凄すぎたのかもしれない。



青い空のもと、ススキの穂が良く映える。見る角度によって白くも見えるし、茶色くも見える。光の具合によっては金色や銀色に輝いているようにも見える。



ススキの草原を周回するルートが整備されている。一周3.1㎞、これを歩くだけでもちょっとしたハイキング気分は味わえそうだ。草原の端っこには駐車場と自然交流館があるが、草原内には木道や展望台などごく限られた構造物しか設置されていない。




たくさんの写真を撮影したけれど、ススキの撮影とは難しいものだ。自然交流館に展示されていたススキの写真の受賞作品は、どれも光と風を感じさせるもの。今日も三脚を立てて、絶妙の光と風のタイミングを捉えようとしているようなカメラマンが多数見られた。


草原の保護のため、歩けるのは限られた歩道でしかない。段ヶ原登山の際に背の高いススキが密集する草原の中を突き進んでいったときのような荒々しさを求めることはできない。



尾瀬などの湿原と同様、木道が設置されているところも多い。人が歩くことがススキの草原にどのような影響を与えるのだろうか。大変な気の使いようだけれど、強そうに見えるけどススキというのは意外に繊細な植物なのかもしれない。



ノルウェイの森だけではなく、NHK大河ドラマの平清盛や黒田官兵衛などのロケ地にもなっているらしい。確かにNHK大河ではしばしば登場する大草原での戦闘や早駆けのシーンの撮影には絶好の地だ。



鉛筆のように先を尖らせた丸太を組んだ門がある。何の説明もないけれど、これって大河ドラマか何かで製作されたものではなかろうか。いかにも砦の城門といった雰囲気だ。



窪地状になっている砺波高原のススキ草原の外周をぐるりと一周して峰山高原に戻る。お椀の縁を歩くような道だ。




残念ながら紅葉した木は未だごく一部。もう半月ほど後ならば、ススキと紅葉とのコラボレーションを楽しめたのかもしれない。



同じ道を戻ることが嫌いな性分なので、面白くないことは理解しつつも舗装された林道で峰山高原近くまで歩いていく。



最後は峰山高原の樹林帯を突っ切って出発したリゾートホテルの裏手に戻っていく。気温が低く、風が強いことを覚悟していたが、幸いにも天候も良く、持ち込んだ厚手のアウターは全く出番がないままに終わった。



歩行距離はおよそ11㎞。標高800~1000mの高原だが、道は程よく整備されていて、アップダウンも少ない。楽しいハイキングコースだった。