神鍋山溶岩流&噴火口探索(豊岡市)

2020年8月13日


朝早く出発して豊岡市の神鍋山の溶岩流と噴火口を訪問する。以前入手したパンフレットには6.5㎞の所用時間が4時間30分とある。相当な難路のようだ。今日は欲張って約10㎞の行程を予定しているだけに万全の重装備で臨む。



神鍋溶岩流を有名にしたのは、何年か前のサザエさんのオープニング映像だ。滝が流れる森の中の渓流を一度訪問したいものだと誰しも思うだろう。もっともサザエさんのように軽やかに岩場で跳びはねるようなことはできないだろうけど、安全第一で楽しもう。



全但バスの栃本バス停から歩いて数分ほどで、最初の見どころ「二段滝」に到着する。神鍋山の噴火による溶岩を稲葉川の水流が長い年月を掛けて少しずつ削り取り、美しい滝や淵を形成している。二段滝というが、二段目は浸食のせいか貫通しているように見える。



渓流に沿って遊歩道が整備されている。もっともどこでも渓流に下りることができる訳ではない。イノシシ対策の電気柵が遊歩道と渓流の間の多くに敷設されているが、遊歩道からでも美しい渓流を楽しむことはできる。



遊歩道にはそれぞれの淵の名称を記した看板が立っている。これは貝殻淵。看板には名前の由来などの説明は何もないけれど、そう言われれば水の溜まりの形状が貝殻に似ているような気もする。



渓流のすぐ傍まで下りることができるポイントもある。凄い勢いで水が流れていく。目には見えないけれど、空気中には大量のマイナスイオンが飛び交っているはずだ。




神鍋山が噴火していたのは数千年~2万年ほど前だという。灼熱の溶岩がここに流れ込んできたことを想像すると背筋が寒くなる思いだ。もっとも今では溶岩は玄武岩になりひどく苔むして滑りやすくなっている。



この渓谷では「ゾウの足跡の化石」が発見されたらしい。「まぼ」とは間歩(鉱山の坑道)のこと。火山と鉱山とは深い関係があるとも聞くが、ここもそうだったのだろうか。



いろいろと探したけれど、象の足跡っぽいものは発見できない。自然保護のために説明版なども極少化しているようだ。フェンスや階段も極少化しているので「くれぐれも自己責任で歩け」との注意書きが随所に見られる。



サザエさんは岩場をピョンピョンと跳びはねるように川を渡っていたが、流れが早くて到底向こう岸に渡ろうという気にさえなれない。ようやく頼りなさげな木橋が現れた。



八反の滝。滝の高さが布八反に相当するという。広い滝壺では子供たちが水遊びで大はしゃぎしている。2時間くらい掛けて歩くつもりの神鍋溶岩流をほんの30分ほどで歩き通してしまった。こんなことなら欲張ってもっと下流から歩けば良かった…。



溶岩流を出て、続いては神鍋山の頂上を目指す。但馬ドームという大きな体育施設の脇を通って神鍋山を目指して歩いていく。



深い森のなかの清流を楽しんだ溶岩流歩きと異なり、神鍋山登山口に向かう舗装道は周囲に日陰を作る高木もない。ギラつく太陽からの直射光を全身に浴びながらの高原歩きを余儀なくされる。



神鍋山の麓にやってきた。関西では数少ないスキー場として知られるところだ。冬の間は賑わうのだろうけれど、炎天下、スキー用のリフトが所在なさげに立っている。



スキースクールや用具のレンタルショップが立ち並ぶ道を進む。自販機で水分を補給しようとするが、多くの自販機は電源が切られている。夏にこんなところを歩く人など想定していないようだ。



さあ、噴火口に向けて神鍋山を登っていく。標高は469m。既に高所にいるが、あとどれほど登らなければならないのか判らないまま登り始める。



草で覆われた斜面を登っていく。急斜面ではないけれど、これでもかというほどに汗が噴き出してくる。



意外にもあっけなく、登山口から15分ほどで噴火口までやってくることができた。噴火口の直径は250m、深さは50mもあるらしい。大きすぎて写真に収まらない。写真の右が噴火口を周回する道、左側が火口の斜面だ。



携帯カメラを思いっきり広角にしても雄大な噴火口の全体像を治めきれないのが残念だ。もう何千年も噴火はないとのことだが、再びいつ噴火するかは判らないという。昔あった死火山とか休火山という分類は今では不適当ということで無くなっている。



山頂の標識をアチコチ探したけれど発見できない。噴火口の脇に神鍋神社というのがあるが、これが山頂なんだろうか?それにしても鳥居も無く、石造りのピラミッド風の不思議な神殿?だけがある。並みの社殿では積雪や強風に耐えられないのかもしれない。



登ってきた道とは別の道で下山する。こちらはうって代わって森の中の道だ。木陰のせいで直射日光からの攻撃は心配ないが、蜘蛛の巣が多いことには辟易とさせられる。



違う道で下山してきたのは、噴火の産物と言われる風穴を見物したかったから。山の麓にある風穴の入口付近で急激に気温が変わることに驚かされる。風穴内の温度は8度だという。



キンキンに冷えた風穴の中に入ることを楽しみに入口に近づくと、鉄柵で立入禁止になっている。落石の恐れがあるとのことだ。折角遠回りしてやってきたのに残念なことだ。



途中道の駅に立ち寄る。驚いたことに温泉の自販機がある。20リットルが10円だ。あくまでお風呂用で飲料には不適との注意書きがある。それにしても風呂一杯分の温泉をどうやって運ぶのだろうか…。



本日の歩行軌跡。歩行距離は予定どおり10㎞ほどだったけど、5時間はかかると考えていた所用時間は3時間弱。厳しい山歩き・沢歩きを覚悟していたけれど特段の難所もなく、重装備も無意味だった。ひどい事前調査不足だけれど溶岩流も噴火口も大満足できた。