平荘湖周回(加古川市)

2020年8月15日


加古川市にある平荘湖に出かける。酷暑のなかだが、湖を巡る一周5㎞ほどの遊歩道は写真で見る限り涼しそうに見える。もっとも問題はアクセスの悪さ…。平荘湖方面へのバスはJR加古川駅からの1日3本しか無い。



ところが加古川駅でバスに乗り遅れてしまう…。仕方なく最も平荘湖に近そうな宝殿駅にやってきた。石の宝殿で有名な生石神社に近い高砂市の駅だ。駅前には高砂市のシンボルともいえる松に囲まれて石の宝殿のミニチュア(といっても結構な大きさだが)がある。



宝殿駅で降り立ったものの、平荘湖畔までは4㎞近くもある。予定とは大幅に違う本格的なウォーキングになってしまったが、覚悟を決めて炎天下のなかを北に向けて歩き始める。西側には以前縦走した播磨アルプスの主峰、高御位山が見える。



1時間ほど歩いて平荘湖の西端にやってきた。1平方㎞ほどもある人工の溜め池(正確にはダム湖に分類されるらしい)なのだけど、農業用や治水用でもなく工業用水確保のために建設されたものだ。溜め池の数では圧倒的な全国一位の兵庫県においても珍しい存在だ。



湖の周囲には車両は通行禁止となった舗装道が整備されている。この時間、比較的日陰が多そうな湖の南側から反時計回りで湖を周回していく。



湖の周囲には数十mの低山が取り囲んでいる。岩肌がむき出しになったところを見ると、この辺りも高御位山などと同じく岩山のようだ。現在湖となっているところには、山々に囲まれた平荘村という長閑な集落があったという。



もともと平荘村にあったものが、湖の建設に伴い湖岸に移設されたという弁財天神社に古めかしい石棺の蓋がある。湖の底に沈んだ平荘村には数多くの古墳があったらしい。姫路の殿様が庭に運び込ませようとしたものの、あまりに重くてここで諦めたらしい。



弁財天神社の境内に鴨塚がある。平荘湖にも冬には多数の鴨が飛来するが、近年ほとんど野生の鴨は流通していないと聞く。鴨南蛮とか鴨鍋の鴨ってほとんどがアヒル、あるいは合鴨だと聞く。



まっすぐに伸びた堤が、なんとダム(平荘第一ダム)なのだ。どうもダムっぽく見えないけれど、堰堤の高さがある一定以上になるとダムという扱いになり、その湖はダム湖ってことになるらしい。



アチコチに魚釣り禁止、餌付け禁止の注意看板がある。釣りには不案内だけれど、結構いい釣り場のようで看板を無視して多くの人が釣りを楽しんでいる。でも何故ダメなのか、という説明もなく、ただただ「禁止」と言うのも説得力に欠けるように思えるのだが…。



確かに危なっかしい足場で釣りをしている人もいるけれど、海でも川でも素人目にはもっと危なそうところで釣り糸を垂れる人を見かける。ここなら少し整備すれば子供たちでも釣りが楽しめそうなところになりそうなんだけど…。釣りの何が問題なのだろうか。



遠くに加古川の市街地、その向こうに臨海工業地帯が見える。工業用水確保のために平荘湖は作られている。加古川って、おそらくは兵庫県下では最大流域面積を有する川だと思うのだけれど、それでも溜め池が多くあるように渇水によく見舞われるようだ。



堰の外側にはダム湖からの放水路がある。水も流れておらず、一見水路には見えない。



第一ダムに続き、第二ダムが現れる。この湖を作るために土盛りした堰はすべてダムと呼ぶらしく、第一から第四まであるようだ。涼し気に見えるかもしれないが、日陰が全く無いコンクリートの堰堤歩きはまさに灼熱地獄だ。



湖の北岸には、水辺まで下りていけるところがある。水質はあまり悪いものとは思えないけど、流れがないので、どうしても淀んでいるように感じる。



多くの古墳は湖の底に沈んだけれど、水没を免れたものがいくつか湖岸に残されている。どうやら横穴式古墳のようだけど、何の説明板もないので詳細は不明だ。



北岸には直径300mほどの丸い半島がある。陸と繋がっているのは50mほどなのでかなり島に近い半島と言えるだろう。深い緑に覆われた秘密地帯だ。



その半島の奥に向かう微かな道があるようだ。少し進んでみたけれど、密林のように茂った樹木や草が行く手を阻む。多くの人が草を掻き分け奥に入っていった形跡は見られるが、こんな猛暑日に探検するところではなさそうだ。



あまりの暑さのためリュックの水はお湯のようになっている。冷たいものが欲しくって車道の自販機に立ち寄る。何故か頑丈な鉄骨でガードされている。車にぶつけられることへの対策だろうか。あるいは自販機の盗難防止対策だろうか。



少し耳の閉塞感を感じはじめた。個人的にはこれは熱中症の黄信号(ひょっとしたら赤信号?)だと思っている。湖の北岸の一部は緑のなかの遊歩道になっていてベンチもある。自販機で買った冷たい飲み物をオデコに充ててしばらく休憩する。



湖の中には謎めいた堤のようなものがある。湖を仕切るほどの仕切りではなく、水の行き来のある土と草の堤防だ。何だろう?



暫く歩くと、野鳥観察小屋が現れた。どうやら先ほどの堤防の方に向かって覗き窓がある。よく見ると堤防の草叢のなかには、何羽もの野鳥が羽根を休めている。



これも古墳らしい。崩壊がひどくて、何が何やら判らない。古墳の標識はあるものの、なんの説明も保護もしていない。石の一部を持ち帰ったり、壊したりする人がいないだろうか。



加古川市立のウェルネスセンターにやってきた。プールや体育館、図書館、ホールなどがあって加古川市の主要施設だと思われるが、駅からここへのバスが1日3本とは寂しい…。もはや歩く気も起らず、冷房が効いた室内で1時間以上待ってバスで帰路につく。



歩行距離は9㎞ほど。いやぁ暑かった…。平荘湖の北には同様に工業用水確保のために作られた権現湖がある。こちらは一周10㎞ほどだ。もう少し涼しくなれば歩いてみたい。