西宮のチベット?山口町散策

2020年8月21日



西宮市の北端、山口町を散策する。六甲山系の北、そして有馬温泉より北に位置する山口町は、遠い、不便、寒い、ことから「西宮のチベット」とまで言われているところだけれど、猛暑日が続くなか、多少は快適に豊かな自然のなかを歩けそうだ。



まずは標高378mの丸山に登る。もっとも山口町の標高が200m以上はあるので実質的には100mちょっとの登山になるはずだ。山口富士とも呼ばれる美しい円錐形の山だ。



丸山の北麓にある丸山稲荷神社の本殿の脇をすり抜けるように山を登っていく。どうやらこの山全体が丸山稲荷神社の神域になっているようで、登山道には沢山の鳥居が据えられている。



鬱蒼とした林道を登っていく。とにかく暑い。日差しも厳しい。標高が100m違えば0.6℃気温が下がるというので、西宮市の市街地よりは2度近く低いはずなんだけれど…。



急坂の階段道が続く。汗が一気に噴き出してくる。事前に入手した町内のウォーキングマップではもっと緩やかな道が示されていたものを、どこでどう間違ったのかは判らないけど、ショートカットの急坂を進む羽目になってしまった。



15分ほどで意外にあっけなく頂上までやってきた。頂上にある丸山稲荷神社の奥社の脇には丸山城跡の石碑が立っている。戦国時代にこの地を支配していた山口氏の居城だったそうだが、信長に反旗を翻した荒木村重に与していたため滅ぼされてしまったという。



丸山の南に広がる金仙寺湖方面へと山を下っていく。



丸山の北麓にあるのが金仙寺。湖の名前の由来となったお寺だが、意外にも小さな無住の寺院だ。境内の過半は遊具が置かれた児童公園になっている。



金仙寺の脇から、金仙寺湖の堰堤を登っていく。多くの南兵庫の湖がそうであるように金仙寺湖もダム湖だ。上水確保のための溜め池だけれど、堤の高さが一定以上になるとダムという扱いになるらしい。この斜面もダムの堰堤ということになるはずだ。



金仙寺湖。長さ500mほどのV字型の湖だ。阪神高速北神戸線が湖に架橋されている。



一般的には金仙寺湖と呼ばれているけれど、丸山ダム湖ともいうらしい。最近ダムマニアなるものが世の中には多いと聞くけど、巨大なコンクリートダム以外にも目を向けてもらいたいものだ。



金仙寺湖から有馬川に向けて田園地帯を進んでいく。兵庫県内の田園のなかを歩くことが最近多いけど、どんどん稲穂が膨らんでいることが判る。



有馬川に沿って整備されている緑道を北に進む。南に3㎞も歩けば有馬温泉だ。北六甲の水が有馬を発して山口を経てさらに北の三田へと流れていく。三田で武庫川に合流してからは一転して南下し大阪湾へと流れ込む。六甲山系を避けるため大きく迂回しているのだ。



緑道の街路樹の多くは桜のようだ。春になれば素晴らしい景色になるに違いない。春ばかりではなく夏も夜ともなれば蛍が飛び交うという。四季折々の楽しみがある道のようだけれど、如何せん、今日は暑すぎる…。



ところどころ緑道の幅が広がって、公園になっている。あまりに暑くてどこかに座りこみたいけれど、日差しの直撃を受けるベンチしか見当たらない。



川辺では生い茂った草を刈り取る作業が進められている。この炎天下で、本当にご苦労様だ。ブラブラと呑気に歩き回っているくらいでヘバっている訳にはいかない。



山口の古い町並み。おそらく有馬から三田方面へと続く古い街道だったのではないかと思われる。古くからの建築様式を受け継いだような家屋が並んでいる。



孝徳天皇行在所址の碑が立っている。大化の改新で即位した天皇だが、有馬温泉に長逗留した際の行宮がここにあったようだ。そう言えば、孝徳天皇の皇子は有馬で生まれたことから有間皇子と呼ばれていたはずだ。



公智神社。木の神である「久久能智神」をお祀りしている。孝徳天皇の行在所建設のための木材もこの神社から提供されたそうだ。境内にある茅葺の旧神輿殿は室町時代のものだという。



この公智神社の前をかつて国鉄有馬線が通っていたはずだ。神戸電鉄との競争に加えて、遊興地である有馬温泉のための鉄道だったことから戦時中に不要路線と位置付けられ、そのまま廃線となったと聞く。鉄道の痕跡は何も見つけることはできなかった…。



山口の町には「震災時協力井戸」と書かれた青いプレートが貼られた家が多く見られる。震災の経験から、緊急時には井戸水を提供していただけるお宅を各自治体が募集しているとは聞いたことがあったけれど、市街地では見かけたことが無かったものだ。



山口の大ケヤキ。樹齢300年、高さ20mを超す大樹だ。驚いたことに市の天然記念物にも指定されているこのケヤキは一般のお宅のお庭にある。更に「遠慮なく近くでケヤキをご覧ください」と門扉を開放してくれている。



山口町郷土資料館。正直なところ、暑さ凌ぎに立ち寄っただけで展示内容は期待していなかったのだけれど、実に立派な内装と充実した展示に驚く。歴史や風俗に関わる資料がこの地の旧家では大切に保管されていたのだろう。



古い町並みを中心に歩いてきたけれど、山口町には新しい住宅が多く立ち並んでいる。確かに西宮や大阪の中心からは遠くて不便かもしれないけれど、自然豊かで美しく住み心地の良い町だと思う。



本日の歩行軌跡。たったの6㎞ほどしか歩いていない。実感としては10㎞くらい歩いたくらいに疲れたのだけれど…。