2020年8月8日
阪急ハイキングのバックナンバーから、「多田源氏ゆかりの社寺をめぐる 満願寺・多田神社・多太神社コース」に出かける。住宅開発が進んだ今も多くの自然が残る宝塚市から川西市にかけて広がる多田丘陵と呼ばれる地域を歩くことになる。
木接太夫彰徳碑が立つ阪急山本駅からスタートする。元々坂上頼泰という足利将軍に仕える武士が山本に隠遁して園芸を究め接ぎ木を発明したという。秀吉がこれを大いに称賛し「木接太夫」の名を与えたという。現在においても山本は日本三大植木産地のひとつだ。
山本駅から10分ほども歩けば、渓流沿いの自然豊かな道へと続く。中山連山の縦走の下山時などで何度か歩いた道だけど、登っていくのは初めてだ。
しばらく山道を歩いていくと、大聖不動尊の山門がある。いよいよ霊験あらたかな聖域に足を踏み入れるようでちょっと気分が引き締まる。
ちょっと最明寺滝にも立ち寄っていこう。鎌倉五代執権北条時頼が出家し最明寺入道となった後の全国行脚の際にここで修業したというが、出家後も幕府を仕切っていた時頼が鎌倉を長く離れたとは考えにくく、水戸黄門漫遊記にも似た作り話に思えてならない。
三洋電機創業者井植歳男の別荘として知られる井植山荘だけど、もとは明治期の大富豪、藤田財閥の藤田伝三郎(の息子だったかも)が建設したもので後年井植が譲り受けたらしい。こじんまりと門だけれど、この奥には広大な庭と贅を尽くした邸宅があるという。
川西市に入り、満願寺にやってきた。多田源氏が代々帰依した真言宗の寺院だ。あまり見かけない珍しい建築様式の山門を護る仁王像は、やはり多田源氏ゆかりの多田神社から明治時代の神仏分離の際に移設されたものだという。
境内には「お寺で喫茶」の幟が立つ。満願寺の境内には「喫茶坊」と名付けられた落ち着いた軽食・喫茶のお店がある。そもそも喫茶文化は平安時代の僧侶が中国から持ち込んだものなのだから、お寺と喫茶の関係は深い。
境内には坂田金時の墓がある。酒呑童子などを退治したことで知られる源頼光の四天王のひとりだ。ここにお墓があることから最近は川西市が金太郎をモチーフにしたマスコットキャラクターを前面に押し出している。
満願寺を北に抜けてゴルフ場に沿って多田神社へと向かう。体調不良に加えて、コロナ禍にあって今年に入って一度もゴルフをしていない。特に訪米中はゴルフばかりしていたこともあり年間40ラウンドほどもしていたのに…。
ティーグランドを潜るような道もある。ティーショットでチョロなどすれば、この道にボールが飛んできそうだ。端っこを歩け、との指示がある。
満願寺と多田神社の間は、メジャーなハイキングコースになっているようで、標識も充実している。
ゴルフ場を通り抜けて道は山へと入っていく。もっとも分岐も無いので迷う心配はなさそうだ。
迷うのはむしろ山を出て住宅街に入ってから。山間部の造成によりできた住宅街にありがちな曲線状の道に加え、特徴のに家が立ち並んでいるだけに目指す方向を見失いやすい。
もとは自然豊かな多田丘陵だったのだろうけど、かなりの時間住宅街を歩いて、ようやく多田神社に到着した。やはり山道歩きと比べて舗装路中心の街歩きは、輻射熱のせいかひどく暑さが感じられ、疲れ方が半端ない。
最近川西市では、この多田神社の山門をデザインしたマンホールを新作したようだ。写真のものは以前川西能勢口駅前で撮ったカラーマンホール。マンホールのモデルとなった多田神社の周辺には色付け無しのものしか見当たらない。
多田神社といえば、三ツ矢サイダー。多田源氏の祖、源光仲が神託に従い居城を定めるために放った矢を見つけた配下の武将に三ツ矢の姓を与えたという。今も三ツ矢サイダーは多田神社の有力な後援者のようで、境内にも自販機やポスターが多数みられる。
多田神社がお祀りしているのは、光仲、頼光に加えて、分家であるはずの河内源氏の頼信(頼光の弟)、頼義、義家の5人。清和源氏の中核が頼信以降、摂津(多田)から河内へと移ったからだろうが、多田神社が河内源氏を御祭神としていることには違和感がある。
もともとは多田源氏の本拠として城郭のようなところだったのだろうか。神社の周囲には濠のようなものが今も見られる。
多田神社から多太神社へと向かう。ややこしいことに、どちらも読みは同じ「ただじんじゃ」だ。途中、川の水が赤いことに気づく。多田銀銅山とはかなり離れているし、猛暑により妙なプランクトンが発生しているのだろうか。なんだか不気味だ。
住宅街で道に散々迷いながら、多太神社に辿りついた。多田神社との混同を避けて「たぶとじんじゃ」と呼ぶ人が多い。
静かな境内だ。源光仲が多田に拠点を構える以前からこの地に鎮座していた神社らしいが、詳しいことは判らないらしい。
街歩きとなった後半はひどく疲れた。汗もたっぷりかいて、シャツばかりかズボンまで汗まみれだ。盛夏だというのに、間違いなく秋に向かっているようだ。栗、蜜柑、柿が早くも青い実を付けている。
大汗を掻くことは想定内。リュックに詰め込んできた服に着替え、多少はさっぱりした格好で能勢電平野駅からの列車に乗り込む。
疲れの実感からすれば12~13㎞は歩いたと思ったけれど、実際の歩行距離は9㎞強。日中の気温は35度まで上がったと聞く。